本研究の目的は,単一の学校種に焦点を当てるのではなく,イメージ及びシェマの観点から,小学校,中学校,高等学校における個人による現物実験の意義,それに伴う学習者の発達段階に応じた数学的学習具の特性とその系統性を明確にし,それが実験の効果を高めることを実証的に示すことである。その多くは,前年度までの論文を中心に示すことができたが,研究を進めるなかで,さらに対象範囲を広める必要性を捉え,幼児教育について2021年度で深め,2022年度は高齢者を中心の対象として進めることができた。すべての年代の人に数学的学習具を媒体として,数学のイメージやシェマを形成することができることを示すことができた。日本の数学教育において,有効な学習具の開発が積極的に行われ,個人による現物実験を中心に据えた,学習者全員が参加できる授業が効果的に取り入れられることを促進するために,『全員が見てふれて動かして学ぶ 中学校数学的学習具写真集 101』(単著2023.1)及び『まちのたんけんすごろく』(単著2023.1)を製本,印刷し,本研究に協力いただいた教育関係機関に配付した。対象配付機関は,実験授業実施校,数学教育における現物実験の実施状況に関する調査の対象校である。また,「アナログ質の数学とのふれあいによるケアストレスに関する実践的研究―シニア世代を対象としたフット・イン・ザ・ドア法を取り入れた数学教室の取り組みを通して―」(関西学院大学教職教育研究センター紀要『教職教育研究』第28号,令和5年3月)という形で研究成果の発表を行った。
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