研究課題/領域番号 |
17K04878
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
岡田 順太 白鴎大学, 法学部, 教授 (20382690)
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研究分担者 |
横大道 聡 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 准教授 (40452924)
栗田 佳泰 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60432837)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 主権者教育 / 多文化共生 / 憲法学 / 教育教材 / 法教育 / 民主主義 / 能動的学修 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究実施計画で定めた研究分担領域について各研究者が研究を深めつつ、6月、1月及び3月に研究会を開催し、研究の目的である主権者教育教材についての探究を深めることができた。特に、方法論研究においては、6月に慶應義塾大学での「模範議会2017」、3月に参議院での「プレ模範議会2018」を開催し、外部の有識者からの評価も含めた検討を行い、模擬体験を通じた主権者教育にあたって不可欠な素養と、それを教育の場でいかに涵養するかについての議論を行った。その際、参加した学生からの意見も聴取しつつ、教育の導入段階における教材の分かりやすさをいかに示すかについて従来にない示唆を得ることができた。また、1月の研究会においては、イギリスの主権者教育に見識を有する専門家からのヒアリングなどを行い、有益な発見をすることができた。 それらの議論・検討を踏まえつつ、過年度に実施した「模範議会2016」を題材として、その検証と批判的分析を行い、「模範議会2016―記録と資料」白鴎大学論集32巻2号(2018年)179-233頁として公刊するに至ったことは大きな業績である。 また、研究分担者のうちの一人は北京大学において「日本における憲法教育と公務員試験」と題する講演を行う機会を得ることができた。そこでは、本研究に関連した報告を行い、それに対する多くの研究者から有益な指摘を受けることができた。本報告の成果は、後日、論文等の形態で公刊する予定である。 なお、教材の中心となる民主政の各段階における模擬活動の台本については、一通りのものが揃ったところであるので、次年度にその内容の修正等を行っていく予定である。 本研究は学際的な要素も大きい研究であり、また、本年度は研究初年度でもあったが、当初の研究目的達成に向けて、意義のある活動ができたものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、①法教育など関連する教育との整合性を踏まえて主権者教育の意義を再構築する「理論研究」、②諸外国や国内における主権者教育の実例や教材を調査・分析する「比較研究」、③中等教育における主権者教育のための教材の開発を行うことを目的とする「方法論研究」の3本柱で進められるが、いずれの領域においてもおおむね順調に進展しているとの評価が可能である。 理論研究領域においては、「グローバル化により揺らぐ『主権者像』」の模索を目的として、「近時の移民や難民受入れに伴う軋轢や排外主義、テロ対策といった喫緊の課題についても考察していく」としていた。これについては、オーストラリアのテロ対策を題材として、その独特の移民・難民法制と実務的対応について検討した岡田順太「オーストラリアにおけるテロ対策法制とその変容」大沢秀介・新井誠・横大道聡編著『変容するテロリズムと法―各国における〈自由と安全〉法制の動向』341-358頁、同「海上密航者収容措置の変容―国境管理の意義と多様性」同359-369頁が業績として挙げられる。また、コミュニティと個人の関係性について検討した同「コミュニティの論理と個人の論理」片桐直人・岡田順太・松尾陽『憲法のこれから』(日本評論社、2017年)105-114頁も、主権者像を模索する一助となる。 比較研究においては、前述の通り、イギリスに関する調査・検討や中国における学術報告などを行い、広い視野からの研究の視座を得るに至っている。なお、研究組織として海外調査を行う予定であったが、構成員の日程調整がつかず、次年度以降に持ち越しとしているが、この点は想定内の事態であるので、研究の進捗に影響するものではない。 方法論研究領域においては、教育における「政治的中立性」の確保について検討することとしていた。これについては、なお議論があるため、個別的な教材作成の中で検証することとした。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、研究実施計画に基づいた研究を進めていく方策である。もっとも、当初から枠をはめすぎて視野を狭めないよう、研究の過程で研究目的に資する題材を見出した場合には、適宜適切な対応で柔軟な軌道修正を図ることとする。ただし、本研究の最終目的が主権者教材開発であるので、そうした着地点において変更がない以上、軌道修正にも一定の限度が存するものと思われる。 今後の研究としては、まず、過去の模範議会の検証・分析を通じて、主権者教材開発に有益な示唆を得られるように引き続き尽力することが重要である。そして、実際に海外の研究者等への聞取り調査や主権者教育・教材の実例の情報収集を積極的に行うことが不可欠であると考えられる。その上で、現在、模擬体験の教材の原案が整いつつあるので、これらの内容を精査しつつ、外部の専門家の意見等を聞きながら、改善を加えていくことで着実に、研究目的の達成がはかれるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究組織構成員の日程の都合で、合同での海外調査が次年度に持ち越されたため。
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