本研究の目的は、新科目「公共 」等のつながりに着目した高校家庭科シティズンシップ教育カリキュラム・マネジメントモデルを構築することである。日本学術会議「公共」にむけてー政治学からの提言-」が公表された。心理学教育学委員会からは、セクシュアリティの多様性とジェンダー平等、政治学委員会からは、グローバルな社会で「生きる」こと、「考える」こと、我が国の社会保障、ジェンダー問題やエイジング社会などを「コミュニティ参加カリキュラム」とすることなどが提言された。 本研究は、家庭科と新科目「公共」との連携で18歳選挙権と市民性の涵養という観点で、第一に実践研究、第二に理論研究を実施した。 実践研究では小学校、中学校、高等学校の家庭科の授業で自分と他者と世界をつなぐ市民性を育むカリキュラムを開発し、公開授業研究会で講師を務め、展開された授業実践を分析・解釈して学校カリキュラム・マネジメントに関連づけた。また、生徒の「生活」を介して、教師たちの実践記録を市民性を育む教育実践として解釈し、ジェンダー視点で教育実践をとらえ、学校カリキュラム改革と関連づけた。 理論研究ではハーバーマスの「生活世界の植民地化」に依拠し、グローバルな社会での生活の変容を親密圏と公共圏の変容として理論化した。主に親密圏の学習内容を探求してきた家庭科と公共圏の「公共」の学習内容を関連づけることによって、多様性とジェンダー平等、社会に参加する市民性が育まれることを明らかにした。 研究成果として、「生活」を親密圏と公共圏の再編としてとらえることは、親密圏の危機を回避し、社会共通の問題関心を開いていくこと、また生活世界を形成する情動的コミュニケーションと言語的コミュニケーションの往還によって、グローバルな社会で生きるための家庭科シティズンシップ教育のカリキュラム編成理論を解明した。
|