研究課題/領域番号 |
17K04888
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
曽山 和彦 名城大学, 教職センター, 教授 (50454418)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 学校不適応予防・解決 / 短時間グループアプローチ / ペア・グループ対話 / かかわりの力 / 自尊感情 / ソーシャルスキル |
研究実績の概要 |
現在、学校現場における喫緊の課題の一つとして学校不適応(いじめ、不登校等)の予防・解決が挙げられる。本研究では3年間をかけて、「教師が日常的に活用できるかかわりの力育成プログラムの開発」を行い、課題解決に向けた一方策を提示することを目指している。児童生徒のかかわりの力を考える際、その構成要因は様々に推察されるが、本研究では先行研究の知見から「自尊感情」「ソーシャルスキル」の2要因を想定し、それらの向上を目的とするプログラム開発を行うこととした。本プログラムの独自性は「児童生徒及び教師にとって負担感が少なく、日常的に継続できる」という点にある。具体的には、「児童生徒の自尊感情・ソーシャルスキルを高めるための、週1回10分程度で実施できるグループアプローチ」と「児童生徒の自尊感情・ソーシャルスキルを定着させるための、各教科等の授業場面におけるペア・グループ対話」の2本柱により構成されるものである。 研究1年次(平成29年度)は、平成24~26年度の3年間、愛知県内の中規模公立小学校(A小学校)、及び、平成25~26年度の2年間、愛知県内の大規模公立中学校(B中学校)の実践から作成された「試行版かかわりの力育成プログラム」を精査し、「かかわりの力育成プログラム~楽しく、シンプルに~」(Ver.1 2018.4.8版 全20頁)を開発した。プログラム内容(目次)は、「1.かかわりの力育成プログラムとは」「2.研究の学術的背景」「3.本プログラムの学術的特色・独創的な点」「4.短時間グループアプローチの展開例と留意点」「5.各授業場面におけるペア・グループ対話の展開例と留意点」「6.ワークシート例」「7.様々な教材・資料の工夫例」「8.主な参考・引用文献」「9.研究・実践協力校」から構成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究1年次(平成29年度)の計画は、これまでの研究成果から既に作成済みであった「試行版かかわりの力育成プログラム」の精査により、新版のプログラム開発を行うことにあった。その当初の計画に関しては、「かかわりの力育成プログラム~楽しく、シンプルに~」(Ver.1 2018.4.8版 全20頁)を開発したことで、研究を順調に進めることができている。さらに、新たな研究協力校として設定した鳥取県内の大規模公立中学校(C中学校)、及び愛知県内の大規模公立中学校(D中学校)の1年生徒を対象に、プログラムの一つの柱「短時間グループアプローチ」の効果研究も進めてきた。両校とも、週1回10分程度のグループアプローチを年間約30回程度実施し、生徒の変容を「学級診断尺度Q-U」「短時間グループアプローチに関する生徒及び担任の自由記述」の2観点から分析した。その結果、両校とも、Q-U得点は全国平均値よりも良好、肯定的な自由記述の増加が示唆された。さらに、校区内4小学校の6年生にも同様な短時間グループアプローチを実践したC中学校1年生と、校区内小学校との連携を行っていないD中学校1年生のQ-U得点を比較したところ、C中学校生徒の状態の良好さが統計的な有意差として明らかであった。このことから、中学校入学時の学級適応を促進するための具体方策として短時間グループアプローチの導入効果が示唆されたと考えられる。これらの研究成果は、「名城大学教職センター紀要第15巻.1-11.中学校入学時の学級適応促進の試み~小中連携による短時間グループアプローチの導入~.2018」「日本教育心理学会ポスター発表(9月慶応大学予定).短時間グループアプローチを活用した小中連携の効果.2018」として整理した。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年次(平成30年度)の計画は、新たな研究協力校として設定した鳥取県内の大規模公立中学校(C中学校)、及び愛知県内の大規模公立中学校(D中学校)、愛知県内の中規模公立小学校(E・F小学校)の児童生徒に対し、「かかわりの力育成プログラム」を実践し、質的・量的なデータ収集を行うことにある。各校を訪問してのスーパーバイズの実施は年2~3回を予定している。研究の開始にあたり、協力校が見つからない場合も想定したが、計画通り、4校の協力を得ることができた。既にC・D中学校には1年生を対象にデータ収集分析を実施しているが、2年次は、4校の全児童生徒に対するデータ収集を行い、プログラム効果の検証を行う予定であり、その点に関しては計画変更はない。ただし、予定している協力校以外の小中学校からも本プログラムを活用したいと希望する学校があるため、実践及びデータ収集が可能な場合、協力校として追加もあり得る。協力校における実践において、プログラムの問題(実践のしにくさ、学校への負担等)が生じた場合には、学校側と相談の上、プログラム修正を行う。 研究3年次(最終;平成31年度)の計画は、協力校での実践によって得られた質的・量的データをもとに「かかわりの力育成プログラム」の効果を検証することにある。具体的な検証方法として、行動観察による質的データは、KJ法によるデータ整理に基づき、児童生徒の学級適応状況、自尊感情、ソーシャルスキルの変容を追う。また、Q-U等を活用した質問紙調査による量的データは、平均値の差の検定(t検定)により、児童生徒の学級適応状況、自尊感情、ソーシャルスキルの変容を追う。なお、各校を訪問してのスーパーバイズの実施は年2~3回を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究1年次(平成29年度)の経費として計画していたのは、データ分析用のノートパソコン及び統計ソフトであった。当初の見積もりよりもパソコンが安価で購入できたため、次年度使用額が生じた。この経費については、次年度計画している消耗品費用(コピー用紙・インク代)に上乗せして使用することとする。
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