研究課題/領域番号 |
17K04891
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
荒木 寿友 立命館大学, 教職研究科, 准教授 (80369610)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 道徳教育 / 道徳科 / 資質・能力 / 教材開発 |
研究実績の概要 |
2017年度は、道徳のコンピテンシーを明らかにするにあたり、以下の2点を中心に研究を行った。 第一に、道徳教育における教材の分析である。道徳の授業において用いられている教材は価値伝達型の教材が多数を占めていることが明らかになった。資質・能力の育成のためには、従来の伝達型の教材ではなく、児童生徒がいかに考えるかをサポートする教材が求められるが、教科化を迎えて出版された小学校教科書は道徳的価値が実現された姿が描かれる読み物教材がほとんどである。資質・能力を育成していくための教材づくりが急務であることが明らかになった(日本道徳教育学会紀要に発表済み)。 第二に、学習指導要領において道徳の資質・能力がどのように捉えられているのか明らかにし、その矛盾点を示した上で、道徳の資質・能力を提示した。道徳の学習指導要領は学習指導要領本体の改定がなされる前に、一部改定という形で提示された。そのために、中教審における十分な議論が加えられておらず、また資質・能力の議論が熟する前に告示されたために、本体とのズレが生じてしまっている。具体的には、「知識・技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」という3つの柱で資質・能力が捉えられたが、道徳の資質・能力は「道徳的判断力、心情、実践意欲と態度」というまとめがなされている。道徳における「知識・技能」は考慮されていない。そこで、3つの柱に基づいて、道徳の資質・能力を再定義し、学校教育全体に位置づくような提案を行った(2018年内に勁草書房より出版予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、当初の予定においては、以下の三点を考えていた。 すなわち、第一点目としては、「日本の道徳教育が抱える内在的な問題を明らかにすること」、二点目に「国内外のコンピテンシー研究の整理と道徳性の再定義」、そして三点目として、「汎用的な力としての道徳のコンピテンシー調査」である。第一点目、第二点目についてはほぼ予定通り研究活動を遂行し、論文の執筆も行うことができた。しかし、三点目については、前者2つのことが明らかにされない限り実行することができなかったため、授業見学は多数行ったものの、目的に基づいて調査する段階には至っていない。平成30年度からは具体的に調査も進めていくことができればと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、道徳のコンピテンシーに基づいたカリキュラム開発を行う予定にしている。ここにおいて、現行の学習指導要領の矛盾点を明らかにし、その問題を乗り越える新たな道徳教育の枠組みが提示される予定である。道徳のコンピテンシーに基づいたカリキュラム構築については、Association for Moral Educationにおいて発表する予定にしており、すでにエントリーが終わり採択待ちの状況である。 また立命館小学校の協力の下、小学校の授業改善プログラムに資質・能力の育成を位置づけ、道徳科(立命科)の授業実践と絡めて検証をおこなっていきたい。そこにおいて、道徳教育の充実と授業改善が子どもたちの学力向上にどのように関わっていくのか明らかにしていきたいと考えている。その際に、道徳のコンピテンシーを調査する際の手順や尺度を開発していく必要がある。 平成30年度以降においては、上記の研究のさらなる精度を上げると同時に、さまざまな場において研修を行い、現場レベルでの授業改善と児童生徒の道徳のコンピテンシーの向上に働きかけていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、主として文献を中心とした研究を行い、また海外出張については別途大学の「研究成果国際発信プログラム」の助成を受けることができたため、旅費や調査関係費を大きく使うことがなかったことがあげられる。平成30年度は海外での学会発表が控えているために、そのための予算計上や、調査に関して講師謝礼などを支払うことが必要になることが予想される。
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