研究課題/領域番号 |
17K04895
|
研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
伊藤 利明 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (10191884)
|
研究分担者 |
石村 由利子 名古屋女子大学短期大学部, 名古屋女子大学短期大学部, 非常勤講師 (70310612)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 道徳教育 / 道徳教材 / 生命の尊さ / こうのとりのゆりかご / 出生前診断 |
研究実績の概要 |
研究の目的は、教育学と看護学の知見を活用して、アクティブ・ラーニングを用いた道徳教材を開発し、児童生徒の道徳性の変容を捉えるための評価方法を確立することである。この目的を達成するために、「生命の尊さ」などのねらいに基づいて「こうのとりのゆりかご」と出生前診断を題材にした読み物資料を自作し学習指導案を作成する。読み物資料の適切性を検証するため、教職を目指す大学生を対象にした模擬授業およびアンケート調査を実施する。アンケートの質問項目は、ねらいを達成しているか、何年生で学習すればよいかなどを問う内容で構成する。アンケートの結果を集計し、作成した読み物資料が中・高校生にとって適切かどうかを確認する。さらに、ディベートを実施して、「評価シート」による評価を実施する。模擬授業でのグループ・ディスカッションやディベートを実施することにより、主体的・対話的で深い学びを達成できる。 研究の意義は、道徳教材を通して、児童生徒に「生命の尊さ」をはじめとして、家族愛などの道徳的課題を考えさせることである。答えが一つではない道徳教材を取り上げることにより、児童生徒は主体的に考えることになり、「考え、議論する道徳」を構築できる。 研究の重要性については、平成30年から小学校では「特別の教科 道徳」を実施しており、道徳教育を充実することが喫緊の課題となっている。「こうのとりのゆりかご」と出生前診断は、現代的で論争的な問題である。これらの問題を取り上げることにより、児童生徒の思考力、判断力、表現力を鍛えることができる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
道徳教育に関する文献を収集し分析した。 研究代表者と研究分担者はアクティブ・ラーニングを用いた道徳教材を開発するために、定期的に会合を持ち入念な打ち合わせを行った。そのうえで、「生命の尊さ」を指導するために、「こうのとりのゆりかご」と出生前診断を題材にした読み物資料を協力しながら自作し、学習指導案を作成した。この試案は、教育学だけではなく、看護学の知見も活用・融合して創作したものである。学習指導案については、平成29年12月に大学生を対象にして模擬授業を実施した。その際、アンケート調査を行い、生命の尊さなどのねらいを達成できたか、中・高校生の教材として適切かなどを質問した。 模擬授業をICレコーダーで録音した。教師や大学生の発言については、逐語録を作成した。「こうのとりのゆりかご」については、アンケート調査の結果を集計し、道徳教材としての適切性を検証した。
|
今後の研究の推進方策 |
道徳教育に関する文献をさらに収集し、教材の適切性や評価方法のあり方を分析する。また、小・中学校の道徳科の教科書を収集し比較する。特に、教科書の中で「生命の尊さ」がどのように取り扱われているかを確認する。 「こうのとりのゆりかご」については、日本道徳教育学会第91回大会で発表の予定である。題目は「道徳教材の適切性に関する検討――「こうのとりのゆりかご」を用いて」である。次に、「こうのとりのゆりかご」と出生前診断の模擬授業やアンケート調査の結果について、論文にまとめる。論文は大学の紀要等に発表の予定である。 出生前診断については、平成29年12月に実施したアンケート結果を集計し、分析する。その成果をまとめた上で、紀要等に発表する予定である。 今後は、道徳授業の評価方法に焦点を当て、望ましい評価のあり方を検討する。児童生徒の道徳性の変容を捉えるための評価方法については、「評価シート」を作成する。教職を目指している大学生を対象にして模擬授業を実施し、「評価シート」で道徳性の変容を確認する。また、大学の教職科目においてディベートを実施し、ディベート用の「評価シート」の適切性を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度、研究代表者については、消耗品を購入する予定であったが、申請の時期が遅かったので、結果として少額の残金が発生した。この残金については、次年度に組み入れることとした。 研究分担者については、勤務先を退職するにあたり、科研費で購入した図書を勤務先に残すように告げられたが、勤務先が遠方なので、次年度以降には図書を利用することができない状況となるため、秋以後図書の購入を控えた。これにより残金が発生した。次の勤務先で研究を継続するために、初年度に購入予定であった図書の購入経費等として、残金を次年度に組み入れることとした。 これらの残金については、翌年分として請求した助成金と合わせて、使用する予定である。次年度については、引き続き研究を進めるため、物品費、旅費などを中心に助成金を使用する予定である。物品費は主として道徳教育や生命倫理に関する図書の購入費などに充て、道徳教科書も収集する。旅費は日本道徳教育学会などの学会に参加するために使用する。
|