研究課題/領域番号 |
17K04899
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
神原 一之 武庫川女子大学, 文学部, 准教授 (80737718)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 数学教師教育 / 真正の評価 / 専門性基準 |
研究実績の概要 |
世界各国において教師教育改革が進められ,教師教育の高度化と専門職化が進んでいる。わが国の数学教師に関する「専門性基準(professional standards)」は存在せず,それぞれの養成機関に委ねられている現状である。このような状況の中,数学教員養成の評価に関する研究推進が求められているが,期待されるほど進展していない。この研究では,パフォーマンス評価やポートフォリオ評価などの真正の評価(リアルな文脈の課題に取り組ませる中で,知識・技能を現実世界で総合的に活用する力を評価する考え方)を人材育成に取り入れて効果を上げているいくつかの実践を国内外から選んでその実際を把握し,人工知能時代を視野に入れてわが国の私立大学における数学教員養成の専門性基準とルーブリック開発の視点を明らかにすることを目的として研究を進めている。 そのために,本研究課題では,3カ年の研究期間をかけて,数学教師教育に関わる真正の評価に寄与する包括的な資料の収集・調査を計画した。平成29年度は,調査研究の全体について,研究代表者1名,連携研究者1名,研究協力者3名を加えた5名の研究グループを組織して,研究の開始にあたって全体会を開催し,本研究の研究計画の検討を行い、資料の収集を開始した。国内の看護師教育で行われているポートフォリオ評価やパフォーマンス評価、ICEモデルについていくつか資料を収集することができた。また,本研究に関連して日本数学教育学会で「パフォーマンス評価によって数学的活動の質を高める」というタイトルで、実践事例を元に①真正の活動,②「学習としての評価」活動,③リサイクルな活動の3点からパフォーマンス評価を利用することにより,数学的な活動の質的向上が図られることについて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教師教育関連図書(国立教育政策研究所編(2017),『資質・能力 理論編』,東洋館出版.他17冊)を購入し,教師教育におけるわが国や海外の情報を収集することができた。教師教育の情報収集に関連して,平成29年度は海外の教師教育に関わる評価研究について視察し情報を得る予定であったが,準備が予定通り進まず,平成30年度に予算を送ることとし,その計画を立案することができた。カナダのスー・ヤング氏が提唱するICEモデルに関する情報収集では,東京にある主体的学び研究所においてスー氏から直接指導を受けた大村氏他にご教示いただくことができた。さらに,ICEルーブリック研究会に参加することができ,ルーブリック作成に関して知見を得ることができた。 看護師教育に関する情報収集では,主に病院で行われている看護師教育に関して現職の看護師の皆さんから情報を収集することができた。また,パフォーマンス評価を実践されている看護師養成系の大学と連絡を取り,次年度の資料収集に向けて調整が整った。 本研究に関わり、「パフォーマンス評価によって活動の質を高める」というタイトルで、平成29年11月4日日本数学教育学会秋期大会にて口頭発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,次の3点について研究を推進する予定である。第1に,平成29年度の文献調査を継続しながら,国内の実地調査に力を入れる。看護・医療分野における養成に関わるフィールドを主な対象として,人材育成に真正の評価を活用している看護養成学校,大学などを訪問して聞き取り調査を行う。訪問先としては,石川県立看護大学、青梅市民病院を予定している。 第2に,平成29年度に計画したが参加できなかったPME(Psychology of Mathematics Education)に参加するとともに,現地の大学(イェヴレ大学)で資料収集を行う。また、アメリカ(可能であればカナダも含む)の教師教育における評価について情報収集を行う予定である(現在調整中)。 第3に,連携研究者や研究協力者と合同会議を8月に開き、これまでの国内外の実地調査の結果をまとめ,日本数学教育学会秋期大会(岡山)もしくは全国数学教育学会(開催地未定)で研究グループとして発表する。 なお,国内外の調査先について当初の計画通りに進まない場合には,訪問先の変更も視野に入れつつ,早期に計画の修正を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年に海外視察を予定していたが,調整がうまくいかず平成30年度に延期した。現在調整が進み、7月に視察し、資料収集を行える予定である。
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