2019年度は,私立大学の小学校教員志望学生の算数科の内容の一部に焦点をあてて理解の実態を明らかにし,科学教育学会で発表を行った。また,国内外の教員養成に関する情報収集を進めた。具体的には以下の通りである。 小学校算数科において「割合」理解に課題が見られることはよく知られている。そこで将来その指導にあたることになる学生の「割合」の理解に関する実情を把握した。その結果から,大学生に対しても「割合」の意味理解の学修が必要であり,合わせて「教材の本質的な理解が求められていること」を認識できる学修が必要であることが明らかになった。 国内の教員養成に関する情報収集では,教員養成学部をもつ大学で実施されている算数科関連科目の講義を観察した。観察した授業では、教材の捉え方、教師の指導・支援の在り方、児童理解、ねらいの設定と数学的活動、授業展開の方法などを1コマの授業に適切に設定しており、かつ講義と演習が適切に配分されたものであり,学生にとって充実した学びとなっていた。このような大学における授業づくりの視点(教材の捉え方、教師の指導・支援の在り方、児童理解、ねらいの設定と数学的活動、授業展開の方法)は,教師の専門性基準の視点の参考となるものであった。 国外の調査では,アメリカ合衆国のNCTM,CAPE,RTI International,NC State Universityなどを訪問し,実際に活用されている教師の専門性規準の収集を行った。また,NC State Universityの学生の教育実習現場を訪問し,コーディネーターやメンターが行っている学生評価に関する情報を収集することができた。小学校において設定されている教師の専門性規準は教科の専門性よりも通教科的な内容が多いことが明らかになった。 本研究のまとめとして,算数関連科目に対応させた15の専門性規準に関する視点を設定した。
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