研究課題/領域番号 |
17K04902
|
研究機関 | 比治山大学 |
研究代表者 |
林 武広 比治山大学, 現代文化学部, 教授 (50116646)
|
研究分担者 |
土井 徹 富山大学, 学術研究部教育学系, 准教授 (60782125)
磯崎 哲夫 広島大学, 教育学研究科, 教授 (90243534)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 現職教員研修 / 連携授業 / 土砂災害 / モデル実験 / 小学校 / インドネシア / 土砂災害 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究として,まず研究代表者の林が2019年6月にインドネシアのウダナヤ大学及びバンジャラヌガラ技術短期大学に出向き,前者では同大研究者との連携研究に関する協議,後者では当地の小学校教員66名対象の防災教育研修を行った。当研修では土砂災害を主テーマとして流水モデル装置による実験も交えた内容を約2時間程度で実施した。この研修効果に関する事後の質問紙調査の統計解析を行い論文発表の準備を進めている。さらに2018年11月~2019年3月に14校で実施した土砂災害に関する連携授業について全担任教師36名対象に,児童にとって有益と思ったこと等について訊ねた質問紙調査の解析を行った。これらの結果と児童の感想の分析結果を日本災害情報学会第21回学会大会で報告した(林ほか,2019年10月19日,予稿集 pp.18-19)。2019年11月-2020年2月に広島県内の小学校10校計23学級で林が防災に関する連携授業を実施し,児童対象に①授業を通し災害についてよくわかったこと,②災害が起こりそうなときの行動について質問紙調査を行った。さらに2020年1-2月に授業で連携した担任教師及び管理職15名対象にインタビュー調査を行った。さらに連携授業での活用と学会発表での意見等をもとに改良してきた流水モデル実験装置の詳細を比治山大学・比治山大学短期大学部教育課程研究第6巻(林ほか,2020年3月,pp.20-26)に論文発表した。 分担者の土井は小学校教員の防災教育に関する意識調査結果を岡山市で開催のESD国際教師教育大会(土井,2019年11月)で報告している。分担者の礒﨑は本課題の対象教科である理科のカリキュラム内容の構成ついて研究を進め,成果を2019年11月,理科教育学研究に論文発表した(磯﨑,理科教育学研究、60巻2号、pp. 267-278)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の研究は一部を除きこれまでの概ね計画通りである。2019年度に予定していた土石流や津波のモデル実験が可能な装置の改良については一応の成果に至ったので,上記のように装置の内容と使用法の詳細を論文発表することができた。また2018年までは防災教育に関し,小学校教師のリテラシーの現況や専門家による連携授業を通しその改善を試みた結果,一定の成果があることが見いだされた。そこで2019年度では連携授業を受けた児童の防災認識に注目し,質問紙調査を試みた。その結果は2020年度中に関係学会に発表する予定である。 一方,2019年度中に予定していたインドネシアの小学校対象の防災教員研修及び児童対象の防災連携授業の成果に中心とした内容の国際誌への論文投稿は,年度内に予定していた渡航調査が先方の都合と新型コロナ感染拡大も相まって延期せざるを得ない状況となった。そのため本課題の研究期間について1年延長を申請し承認された次第である。
|
今後の研究の推進方策 |
1年間の課題の延長承認によって新たに最終年度となった2020年度の計画としてまず2019年度までに行った上記の質問紙及びインタビュー調査結果の分析結果の総括をもとに本研究課題の目的である教師及び児童の「防災テラシー向上」の視点から考察を行う。それらの結果はこれまでと同様に関連学会で口頭又は論文発表する予定である。なお本課題は小学校を主対象としているため,主な調査活動である連携授業実施が対象学校の希望により年度末の3月までずれこむことが多い。そのため例年,調査結果の解析は次年度初頭までの期間を要していることが主たる理由である。 昨年度中に実施を予定していたインドネシア及びフィリピンでの現地調査については,両国及び我が国の海外渡航が円滑な状況になり次第,実施の予定である。しかしながら年度内に国際的にコロナ感染終息が不十分で海外渡航が困難な場合にはネット活用によるリモート連携も視野に入れるなど可能な方法を模索している。なお海外渡航調査で予定していた内容としてはインドネシア,バンジャラネガラ県の小学校において代表者の林による防災に関する連携授業,教員対象の防災教育ワークショップである。同じくマニラのサントトマス大学の研究者との連携研究では研究当初から実施してきた広島及びインドネシアの場合と同じ内容の質問紙による現職小学校教員の防災リテラシーの状況調査と当国の状況を踏まえた効果的研修の方途を検討していく。その後,これら3カ国のケースを比較検討し,災害が多い国における教員及び児童の防災リテラシー向上のための指導のあり方とそのための効果的な教員研修の方途を総括的に考察し,その結果を,本課題の研究成果として国内外の関連学会誌等に論文投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
インドネシア及びフィリピン出張を予定していたが,相手先の事情と新型コロナ感染の国際的広がりのため,実施が不可能となった。そのため研究期間の延長を申請し,承認されたため旅費相当分が残となり,今年度に繰り越しとせざるを得ない状況となった。本予算は当初の予定通り本年度中に両国の海外出張旅費として使用する予定である。
|