研究課題/領域番号 |
17K04904
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研究機関 | 長崎総合科学大学 |
研究代表者 |
上薗 恒太郎 長崎総合科学大学, 共通教育部門, 特任教授 (50128005)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中華人民共和国の道徳教科書 / 日本の道徳教科書 / 自己肯定感 / 連想法 / 聞く資料 / 民主主義 / 国際道徳授業 |
研究実績の概要 |
2017年9月から国定教科書とされ,小学校ならびに中学校1年生の二つの学年から使用され始めた中華人民共和国(以下中国)の道徳教科書を購入し,生命尊重に関わる部分を中心に翻訳・検討を始めた。他の学年は従来の道徳教科書を使用しており,そのため8種類の中国の教科書を入手している。比較すべき日本の検定済み教科書については小学校2社のものを既に入手したが,一般的に購入できるのは2018年4月からのため,発注している。 中国の道徳授業が,価値を個々に毎時間教える形を批判して,地理,歴史,政治とともに統合して体系的に教えて世界観を教える点と比較すると,日本の道徳教育もばらばらに止まりがちな価値を統合する必要があろう。その際しかし,教科書上で民族国家の愛国心の方向で統合するのではなく,一人ひとりの子どもにおいて自己肯定感として価値の統合を志向することが日本の道徳教育の方向である。 2017年度は,この日本の道徳授業改善の方向を示す出発点として,学びにおいて耳を傾ける姿勢の意味を明らかにし,「聞く資料による道徳授業―子どもの自己肯定感を育むために―」を九州教育学会研究紀要第44巻に載せた。 さらに,どのように構成された授業が,価値項目を伝えるだけでなく,子どもの自己肯定感を育てるか,授業要素を明らかにするために,国際的に実験的60分授業をおこなった。自然科学と人文科学の大分裂を越えるESDの思考を育て,自然と人間の関わりを描いた自作資料「ミサゴのいる山」を使って,6つの要素を組み込んで,学習指導案,ならびに中国語,台湾の言語,ドイツ語,もちろん日本語の資料を公開し,有効性を論じるとともに自己肯定感育成が民主主義の基盤になると論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
中華人民共和国における,また日本における,基本的な資料の入手の態勢を整えた。 すでに,子どもの自己肯定感を育てるすぐれた道徳授業を国際的に展開している。2017年12月には中華人民共和国は上海の華東師範大学で沈暁敏教授と道徳授業研究会を2日間にわたって開催し,現場の教師,大学院生ならびに他分野の教授の参加を得て,互いの道徳授業改善について討議することができた。 さらに,自己肯定感を育てるための授業の要素について,聞く要素など6つの要素によって学習指導案を構成することにより,道徳授業改善が可能であるばかりでなく,子どもの価値意識ならびに自己肯定感の育成に資するとの方向を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
中華人民共和国において順次出版される国定教科書を継続入手し,日本の8種類の小学校検定済み教科書を入手・検討する。その際の軸を,他教科と連携して一般化しやすくまた各学校の重点項目になっていることの多い,そしていじめの課題に答える方向を見出しやすいと思われる,生命尊重に重点をおく。 子どもの自己肯定感を育てるすぐれた道徳授業の構成について,さらに検討を進める。すなわち,学習指導案の構成ならびに授業実践を通じて,子どもの意識において成果を,連想法を用いて検証していく。こうした授業は,日本国内の久留米市,高松市,徳島市でも授業実践を展開するように検討中である。
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