研究課題/領域番号 |
17K04907
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研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
友安 一夫 都城工業高等専門学校, 一般科目理科, 教授 (10332107)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Tex / アクティブラーニング / ブレンド型授業 / 反転授業 / グループ学習 / ICT / 工学系数学 / 高専数学 |
研究実績の概要 |
微分方程式の講義において,ここ十数年来に渡り逆ラプラス変換の計算過程でヘビサイド法を用いて部分分数分解する方法を学生に教授している.このヘビサイド法を学生に教授するデリバリ・スキルのTipsに関してはこの十数年間にわたる検証の結果,十分得られていた.このヘビサイド法に関するデリバリ・スキルのTipsに関して日本数学教育学会「第101回全国算数・数学教育研究(沖縄)大会の高専・大学部会(2019年8月8日)」でその教育的効果及びその有効性について口頭発表した. さらに,H30年度中にサイエンス社から高専卒業後に大学編入を目指す学生のための自学自習可能な「大学編入試験問題集」の執筆依頼があった.この「大学編入試験問題集」の執筆において,本研究で得られたデリバリ・スキルに関する知見を担当原稿に反映しつつ執筆することができた.この結果,R2年5月25日にサイエンス社から上記問題集が出版された. R1年度もH30年度から継続して微分積分学(1変数)と微分方程式の科目でグループ型学習のALによる授業を導入した.この2科目の授業を行いながら学習内容毎に,(1) 講義内容の劣後順位付けと知識のデリバリ・スキルの留意点の調査,(2) グループ型学習の教員介入に対する留意点の調査,(3) 反転授業に伴う事前授業の動画を作成した.その結果,H29~30年度に引き続き,R1年度も通常クラスでは,微分積分学(1変数)の授業,大人数クラスでは,微分方程式(80人クラス)の授業において,授業科目に依存しない上記 (1)~(3)のTipsの検証を行い,効果的なグループワーク型の授業に対応した教材作成について考究することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29年度からH30年度においては,高専1年次におけるグループワーク型の数学補習体制について,数年間にわたり蓄積した Tips をまとめ,日本数学教育学会と数学教育学会において口頭発表することができた.さらに,口頭発表した内容を研究論文として都城高専の研究報告にまとめて発表することができた. R1年度においては,微分方程式の講義における逆ラプラス変換の計算過程でヘビサイド法を用いて部分分数分解する方法の教育効果及びその有効性を検証した結果を日本数学教育学会で口頭発表した.これは,講義内容の劣後順位付けと知識のデリバリ・スキルの留意点の一例としての研究成果である. H30年度中では,サイエンス社から高専卒業後に大学に編入を目指す学生のための自学自習可能な「大学編入試験問題集」の執筆依頼があった.この「大学編入試験問題集」の執筆作業が,R1年度は研究時間のほとんどを占めた.これにより,当初の研究計画の推進は十分に行えなかったが,H29年度から H30年度に本研究で得られた幾つかの知見を執筆原稿に反映することができた.この結果,R2年5月25日にサイエンス社から上記問題集が出版された. 本研究の最終目的は工学系の数学授業におけるグループワーク型授業に対応した次世代型教材の開発である.この最終目標を達成するために,サイエンス社から出版予定の高専数学テキストの改訂版執筆時に「講義内容の劣後順位付けと知識のデリバリ・スキルの留意点」をテキスト全体に落とし込むことを一つの目標としている。この準備作業として,高専の学生による現行のテキストの校閲と意見聴取等を H29~R1年度の期間に終えており,その点では研究計画は十分に遂行されているが,ICTに付随した次世代型教材の開発に関しては進展が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度よりサイエンス社から出版予定の高専数学テキストの改訂版の執筆作業が始まる予定である.まず,基礎数学の改訂版の執筆が今年度の主な作業である.これと並行して,来年度から線形代数の改訂の執筆が予定されており,その準備作業も始まってくる.また,研究論文としては,以前2年間にわたり担任をしたクラスのSHRを利用し,グループワークを実践したデータを分析しており,グループワークに関する基礎研究の位置づけとして,教育論文としてまとめる予定である. あと,研究代表者は以前より微分方程式の自著テキストの原稿を書き溜めている.これを出版するために,森北出版とサイエンス社のほうにここ数年来相談を持ち掛けている.今年度は岡山理科大学の鬼塚政一氏にも協力依頼することで,出版計画を推進したいと考えている.具体的には鬼塚氏は常微分方程式の定性理論の専門家であり,専門家の視点から工学系数学というくくりの中で,PCやフリーソフトで微分方程式の理論解や数値解等を簡単に求めることのできるこの時代において,微分方程式を理解・応用するという視点において本質的な知識の劣後順位付けを全く新しい視点で行いたいと考えている.この新しい視点での微分方程式の教科書執筆を今年度から本格的に始動する計画である. また,本年度は新型コロナウィルスの影響により,各大学・高専で否応なく遠隔授業を導入せざるを得ない状況となっている.現在,本校では遠隔授業をオンデマンド方式で行っており,オンデマンド方式で行う授業を有効活用することで,ICTに付随した次世代型教材の開発に注力する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度からR1年度の2年間に渡り研究代表者の学内業務として寮務主事(副校長)を拝命した.寮業務は夜間の対応に加え,授業等の通常業務もあり多忙を極め,開寮期間中は月平均300時間超の勤務時間であった.この状況が R1年度末まで継続し,R1年度も基本的に研究計画通りに研究の遂行ができない状況であった.加えて,R1年度はH30年度以上に、対応業務が増え激務であった.特にR1年度も年度当初に大きな問題が寮内で発生し,年度途中からは国際寮の新営の申請,学寮新営2期の概算要求の準備・申請作業のため,多忙に拍車がかかった.さらに,年度末には新型コロナウィルス蔓延に伴い,参加を予定していた研究集会や研究打ち合わせが全てキャンセルとなり,研究費を計画通りに執行することができなかった. なお,今年度の使用計画については,遠隔授業及び反転授業のための事前授業動画を編集及び管理するためのPC及びその周辺機器の購入を計画している.加えて,一昨年度より2年間に渡りほとんど実施できていない連携研究者との研究打ち合わせのための旅費や共同研究者等の招聘旅費に充てる予定である.
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