研究課題/領域番号 |
17K04908
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
樋口 雅夫 玉川大学, 教育学部, 教授 (70510189)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 18歳成人 / 公民教育 / 消費者教育 / 法教育 / 金融経済教育 / 民法改正 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、以下の研究活動を実施した。 第一に、平成29年度に引き続き、中学校社会科及び技術・家庭科(家庭分野)、高等学校公民科及び家庭科に位置付く「18歳成人」に関する授業実践事例の収集、及び授業者へのインタビュー調査を実施した。具体的には、各省庁や都道府県政令市教育委員会、行政部局、関係団体が公表している授業実践事例を収集し、学習指導要領に基づく現行の公民教育カリキュラムの枠組との関連を踏まえて分析・位置付けを行った。その際、平成30年6月の民法改正により令和4年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられることや、平成29年3月の小・中学校学習指導要領改訂告示、平成30年3月の高等学校学習指導要領改訂告示等の状況の変化を踏まえつつ、(1)「18歳成人」に求められる資質・能力、(2)満18歳に達するまでに学習すべきと考える内容の系統性、及び(3)外部講師等の専門家との連携・協働の在り方といった観点から検討を進めた。また、インタビュー調査に当たっては、前掲(1)から(3)までの観点とともに、主体的・対話的で深い学びを実現するアクティブ・ラーニングの教育効果に関してどのように捉えているか、といった点の聞取りに留意した。 第二に、平成29年度より継続して収集・記録した授業実践事例が実践された場としての消費者教育、法教育、金融経済教育に共通して認められる「18歳成人」に関する目標・内容構成原理と方法の抽出を試みるとともに、日本消費者教育学会、日本公民教育学会などにおける先進的な研究の知見の収集も併せ行い、研究最終年度に向け研究内容・方法の改善・充実を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度より遂行している本研究の目的は、成年年齢の引下げ(以下、「18歳成人」と示す。)へ向けての民法改正が見込まれる我が国の状況に鑑み、第一に「公共性の涵養」などをねらいとして現在の初等・中等教育、とりわけ小・中学校社会科、高等学校公民科を中核として展開される公民教育カリキュラムにおける消費者教育、法教育、金融経済教育などの授業実践事例を分析し、「18歳成人」という今日的な課題に対応した教育の目標・内容構成原理と方法を抽出すること、第二に「18歳成人」に求められる資質・能力の明確化を通して新たに構築されうる公民教育カリキュラムを提示することにある。 平成30年6月の民法改正により、令和4年4月1日から「18歳成人」が実現することとなったが、本研究においては、その当初よりこうした状況の変化を織り込んだ上での研究実施計画を立てており、当初の計画に沿って、「18歳成人」に関する授業実践事例の収集、及び授業者へのインタビュー調査等、平成30年度に予定していた研究を進めることができた。その結果として、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下の研究の推進を予定している。 第一に、平成31年度は平成29、30年度に引き続き、中学校社会科及び技術・家庭科(家庭分野)、高等学校公民科及び家庭科に位置付く「18歳成人」に関する授業実践事例の収集及びインタビュー調査を実施する。その際、「18歳成人」に求められる資質・能力を育む教育として、学校全体におけるカリキュラム・マネジメントを視野に入れて計画された単元計画に基づく授業実践事例の収集及びインタビューとなるよう留意する。更に、学校、なかんずく初等・中等教育段階における公民教育カリキュラムを超え、消費者教育推進団体等が社会教育として実施している事例の収集及び関係者へのインタビュー調査を実施する。これは、新たに構築されうる初等・中等教育段階における公民教育カリキュラムの適用範囲を明確にするという意図で行うものである。 第二に、平成29年度より継続して収集・記録した授業実践事例及びインタビューの内容を総合的に分析し、消費者教育、法教育、金融経済教育に共通して認められる「18歳成人」に関する目標・内容構成原理と方法を抽出・精緻化するとともに、「18歳成人」に求められる資質・能力を育む教育を児童生徒の発達段階に応じて公民教育カリキュラムの中に体系的に位置付け、その関連性を明らかにする。 第三に、本研究の成果を取りまとめ、新たな公民教育カリキュラムの構築に向けて、関連学会、研究会等において発表し、広く社会へ発信するとともに批判を仰ぎ、更に研究成果の改善を図ることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当該年度は、研究対象としている「18歳成人」に関する授業実践事例の収集及びインタビュー調査を行った。また、「18歳成人」に求められる資質・能力を育む教育の実践に関連すると考えられる学会、消費者教育推進団体等における研究大会に参加して、最新の研究動向の把握に努めた。その際、研究代表者の勤務地である東京近辺から離れた地域での調査研究を行うに当たり、近接する中学校と高等学校を連続する日程で訪問するなどして出張旅費の縮減に努めた結果、とりわけ旅費区分において未使用額が生じることとなった。 (使用計画) 次年度は、本研究の最終年度となる。したがって、授業実践事例の収集及びインタビュー調査を行うことに加え、研究成果の発表等で学会、研究会等への参加の回数が当該年度より相当数多くなることが見込まれる。本研究では、「18歳成人」に求められる資質・能力を明確化するとともに、新しい学習指導要領の実施を見据え、初等・中等教育における通常の教育課程に適切に位置付け、効果的に実践されうる事例を収集することを目指しており、当初予定されていた次年度の助成金に加えて当該助成金を執行することによって、より一層の研究の進展が期待できる。
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