「1.クラウド・データベースを活用した授業形式・方法の検証と改善」に関しては,Web上に構築している「画像データベース」「教材ライブラリー」「Eラーニング・コンテンツ」を参照しつつも,特定の疾患等を教員が指定せずに,学生の自由な選択による教材作製を行う授業の展開を継続した。各学生グループは情報探索・議論といった主体的活動と,各自のケガや病気などの個人的経験も踏まえつつ,教材対象の疾患等を選択した。前年度の成果と比較すると,教員によるコンテンツ提示による対象限定は、学生グループの主体的な対象疾患の選択を狭める可能性が示唆された。構築したアンケートシステムの使用により,前年度までの同一授業受講学生授業評価データと容易に統合・比較・照合が可能となり,授業の継続的・客観的評価に活用し得ることが明らかとなった。 「2.病弱児・肢体不自由児の困難理解を促す『自作可能教材』と『場面状況教材』の開発・充実」に関しては,障害者・支援者のロールプレー的要素を取り入れつつ,複雑多様なコミュニケーション成立要因をある程度整理した教材構成を試みた。その結果、事前の障害状況説明と、開始段階での教員主導の場面進行の導入が必要であることが確認された。しかし場面の複雑さと障害者・支援者のロールプレーを担う学生個々の障害認識の違いにより、教材活用による意識変容の明確な成果を確認するには至らなかった。「不安」「困惑」を体験する場面状況教材としての自己検査・注射の擬似体験場面の導入では、対象疾患の困難の理解が進むことが確認された。
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