研究課題/領域番号 |
17K04913
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
熊谷 恵子 筑波大学, 人間系, 教授 (10272147)
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研究分担者 |
川間 健之介 筑波大学, 人間系, 教授 (20195142)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 算数障害 / 反応速度(計算速度) / 計算の正答率 / 認知能力の偏り / 継次処理優位 / 同時処理優位 / 暗算 |
研究実績の概要 |
コロナ禍で、子どもたちへの指導ができなかったため、以前収集した暗算の範囲の計算データを再度、分析した。 まず(1)通常学級にいる小学校1年生から4年生の1096名を対象に暗算範囲である20以下の加減算:たし算(和が10まで)、引き算(被減数10まで)、くり上がりのあるたし算(和が20まで)、繰り下がりのあるひき算(被減数20まで)の162式の反応時間(≒計算時間)と正答率により、それらについてクラスター分析を行った。その結果、計算式の難易度を学年ごとに群分けすることができた。これらのことから、計算の難易度を指標とした計算式の体系を明らかにし,計算式の指導順序を根拠をもって細かく検討することができたこととなった。(2)このデータのうち、計算時間3秒までで求めた正答率を求め、それらを項目反応理論により分析し、1つ1つの計算式の困難度を求めた。これら2つの論文は研究誌に投稿中である。さらに、計算障害のスクリーニングを行えるような指標を確立するため、暗算範囲の加減算の正答率および計算時間からみて、計算の困難さを抱える場合のカットオフ値を下から5%、10%の2つの基準を設定した。(3)それらとは別に、小学校3年生~6年生の552名に対する、かけ算(正答式50式および誤答式50式、計100式の判断)の計算時間3秒における正答率を項目反応理論に基づき、困難度の分析を行った。各段の困難さを求めたところ、5の段、2の段から6の段・7の段・8の段への困難度の高さが明らかとなった。さらに、項目反応理論の困難度と、①かけ算の困難度が積の大きさ、②九九を唱えるときのモーラ数の大きさ、③「i」のある九九との相関を求めたところ、②と中程度の相関があり、他よりもより大きな相関となった。 このような暗算範囲の加減乗除の計算式の習得度の順序から、かけ算、わり算、数直線の指導を考案し、ドリルとしてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までに、認知のある一定の偏りがある肢体不自由児計算速度および正答率を測定した子どもたちに対して、ICTによる指導の効果を検討しようと思っていたが、コロナ禍であったために、当該学校に出入りすることや直接子どもと対面しての指導を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、最終年度として、認知処理様式に応じたICTを使った子どもの指導を行い、その効果についてまとめるつもりである。 今後もコロナ禍の状態が引き続くことが予想されており、それをどのように打開していくかということを検討しなければならない。直接対面で行った方が、より子どもの反応を捉えることが可能であるが、それ以外に、Zoom等の会議システムなどを使用した状態での指導を行い、その中で効果の検討が行えるようにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であったため、研究協力校に出向いて、子どもたちとの対面の直接指導を行うこともできなかった。また、学会に出席してもオンラインであるため、旅費などの費用もかからなかった。分析のための統計処理等も大学のSPSSや無料のアプリを使用したために経費の執行に至らなかった。 今年度は、最終年度であるため、これまで収集したデータの分析を行い、指導の順序などを検討していくこと、また、それらの論文化も急ぎ行う。そして、指導順序を考慮した上でICT指導用教材を完成させること、それを何らかの方法で協力校の子ども達に対して実施して効果を検討しまとめたい。
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