研究課題/領域番号 |
17K04918
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 慶一郎 東京大学, 相談支援研究開発センター, 准教授 (10323586)
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研究分担者 |
苗村 育郎 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (00155988)
水田 一郎 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 教授 (20273641)
布施 泰子 茨城大学, 保健管理センター, 教授 (60647725)
金子 稔 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (50571858)
丸田 伯子 一橋大学, 保健センター, 教授 (50343124)
佐藤 武 九州大学, キャンパスライフ・健康支援センター, 教授 (30178751)
田中 生雅 愛知教育大学, 学内共同利用施設等, 教授 (10262776)
岡本 百合 広島大学, 保健管理センター, 教授 (90232321)
伏見 雅人 秋田大学, 保健管理センター, 教授 (10291270)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発達障害 / 自閉スペクトラム症 / 自殺関連行動 / 質問紙 |
研究実績の概要 |
(1)症例検討による質的検討: これまでの症例検討に加え,文献調査をさらに進めた.発達障害がある大学生年代の重篤な自殺企図では,自閉スペクトラム症の相互的対人コミュニケーションの問題,社会性の問題,限局された興味の問題のそれぞれが関係し得ること,これまでの人生の慢性的な集団・社会適応の悪さ,家族の理解不足,将来への強い不安といった,自閉スペクトラム症の性質による二次的な体験が大きく影響していることが再度確認された.特に,他者との関係や学校などの集団での適応が悪い状況,場合によってはトラウマ的な体験が繰り返された経過に注目する必要がある.こうした考察について,発表の機会を得て議論を行った. 自閉スペクトラム症を中心とした発達障害の性質がある若年者が,慢性的なトラウマ状態に暴露されることで様々な精神症状が出現する.児童精神科の領域で問題になっている,発達性トラウマ障害(van der Kolk)や第四の発達障害(杉山登志郎)と類似した病理が想定される.発達性トラウマ障害では,出現しうる精神症状にフラッシュバックや解離が含まれており,本研究で取り扱っている自殺関連行動についても,従来指摘されることが少なかった上記の病理との関係も検討する必要があると考えられた.
(2)質問紙による量的調査: 自閉スペクトラム症の自記式スクリーニングであるAutism-Spectrum Quotientの日本語版(短縮版)をどのように扱うかが課題となった.若林版の利用では当初計画していたよりもコストがかさむ問題,また栗田版ではBaron-Cohenのオリジナルと短縮版に用いられている質問項目が異なるという問題があった.この課題を検討して本研究で用いる質問内容を決定し,健康診断や授業などの機会を得て配布する準備を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)症例検討による質的検討: 全体的にやや遅れているが,複数大学で行う簡易的な心理的剖検,先行研究の調査は進んだ.発達障害,特に自閉スペクトラム症の自殺関連行動に関係した精神病理については,研究集会で発表することが出来た.
(2)質問紙による量的調査: 全体的に遅れている.研究代表者の所属する組織の改組があり,研究活動以外の業務が増えたこと,質問紙の作成に想定以上に時間を要したことが原因であり,そのため研究計画を一部修正することになった.活用予定であった質問紙一部の版権問題を解決するために,質問紙全体の再構成を研究代表者が行った.このプロセスで時間が消費された.
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今後の研究の推進方策 |
(1)症例検討による質的検討: これまでに抽出された特徴を整理し,自殺のリスクを高める要因としてまとめる.
(2)質問紙による量的調査: 完成した質問紙を用いた量的検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
質問紙による量的調査の遅れがあり,これに関係する使用予定額が活用されなかった.
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