研究課題/領域番号 |
17K04920
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
藤野 博 東京学芸大学, 教育学研究科, 教授 (00248270)
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研究分担者 |
松井 智子 東京学芸大学, 国際教育センター, 教授 (20296792)
黒田 美保 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 教授 (10536212)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 心の理論 / 発達 / 言語 / 視線測定 / 明示的 / 潜在的 |
研究実績の概要 |
学齢期のASD児における心の理論の発達的変化を検討するため縦断的調査を行った。小学1年生から6年生までのASDの診断を受けた児童70名を対象とし、一次誤信念課題と二次誤信念課題の結果を集計し分析した。フォローアップ期間中に、一次誤信念課題は48名(69%)、二次誤信念課題は22名(31%)が通過した。いずれの課題も小学4年生までに通過できるようになる傾向がみられた。語彙年齢は一次誤信念課題の通過前は平均7歳10か月、通過時は平均9歳1か月で、有意な上昇がみられた。二次誤信念課題においては、通過前は平均9歳 8か月、通過時は平均11歳0か月で有意な上昇がみられた。ロジスティック回帰分析の結果、小学5年生においては語彙年齢から二次誤信念課題の通過が有意に予測できることが明らかとなった。しかし、言語力が一定レベル以上あっても通過しない児童もみられた。言語力は誤信念課題の通過を促進するひとつの要因ではあっても十分条件ではないことが推察された。 また、ASDの小学生12名を対象とし、言語指示によるテスト形式の誤信念課題(明示的誤信念課題)とアイトラッカーを用いて視線の測定によって言語を介さずに実施する誤信念課題(潜在的誤信念課題)を約1年間の間隔をおいて2回実施し、両タイプの誤信念理解の発達とそれに関与する条件について検討した。その結果、潜在的誤信念課題では正反応の増加はみられなかったが、明示的誤信念課題では有意な得点の上昇がみられた。明示的誤信念課題における得点の上昇を予測する変数を重回帰分析によって検討した結果、2回目の語い年齢の寄与が明らかとなった。そして明示的誤信念理解の発達に10歳レベルの言語力が関与することが示唆された。この結果から、ASD児において、明示的な誤信念理解は言語力に伴って発達するのに対し、潜在的な誤信念理解にはそのような発達がみられないことが明らかとなった。
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