研究課題
特別支援教育の本格実施に伴い、学習障害児(LD児)の認知特性にあわせた支援方法の研究がなされてきている。一方、学習障害という診断が確定する前の段階において、読み書きに困難を示す子どもがおり、これらの子どもに対する支援を含めて学習障害の支援を提供するという指導モデルが、RTIモデルとして提案されている。読み書き障害の背景要因に、音韻障害があることは多くの研究で報告された。一方、近年の読みスキルの発達研究(Hulme,2007)より,音韻意識と視覚認知の機能レベルは、読みスキル達成の背景要因であることが報告された。音韻意識と視覚認知の困難は、漢字と読み書き困難に関与する。これより、読み書き障害の診断では、ひらがな読みを評価し、さらに漢字の基準値に基づいて総合的に評価する必要がある。平成29年度においては、漢字の読み書きの基準値とひらがな読みの基準値に基づいて、読み書き障害を総合的に評価する診断方法を開発した。また、読み書き困難の背景要因を明らかにするうえで必要な音韻意識テストと視覚認知テストを開発し、その基準値を測定した。小学2年生から6年生を対象として、基礎調査を行った結果、視覚認知の弱さは、画数の多い漢字の書字の低成績と強く関連することが明らかとなった。これらの知見を元にして、モジュールの時間で一斉実施できる、リスク要因回避のための一斉実施型の国語学習教材の開発を行った。平成30年度においては、国語学習教材の有効性について検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
国語の基礎学習の困難(ひらがな文の流暢な読み、特殊音節表記の読み書き、漢字単語の読み書き、読解)に対する支援教材の開発を行う上では、読み書き低成績の背景要因について、基礎調査に基づき検討する必要がある。本研究では、平成29年度において、基礎調査を行い、背景要因について明らかにすることができた。そのため、学習支援教材の効果判定を行うことが可能な状況になっているため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
平成29年度においては、モジュールの時間で一斉実施できる、リスク要因回避のための一斉実施型の国語学習教材の開発を行った。これらの課題は、タブレットPCソフトの形で提供することにより、通級による指導においても利用可能である。次年度以降の推進方策の一つに、国語学習教材のタブレット化を設定し研究を行っていく。
学会発表を予定していたが、校務のため、学会参加が難しくなり、その結果、旅費としての使用ができなくなった。次年度に、発表学会を増やして対応する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件)
学校教育学研究論集
巻: 36 ページ: 31-46
児童青年精神医学とその近接領域
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10.6033/specialeducation.5.23