平成29年度には、漢字の読み書きの基準値と平仮名読みの基準値に基づいて、読み書き障害を総合的に評価する診断方法を開発した。 平成30年度には、漢字書字学習の定着を確保する学習支援の手続きの開発が必要であることがわかった。そこで、書字の言語手がかりの学習の2週間後に、リマインドと再学習を4回行う学習条件の有効性について、あわせて検討することにした。言語手がかりは、漢字の組み立てを説明する短文であった。対象は、定型発達児238名、LD児13名とした。書字の言語手がかりを学習しリマインド再学習する条件(A条件)、言語手がかりのみ学習する条件(B条件)、反復書字により学習する条件(C条件)を検討した。A条件で学習した場合には、学習後4週テストで、B・C条件と比べて、LD児の正書字の標準得点が有意に多かった。A条件とC条件の学習後の忘却を生存率分析により検討した結果、A条件とC条件の生存率曲線には有意な差を認めた。これよりA条件は、書字手がかりの言語記憶の再固定化を効率的にもたらし、書字の保持を促進させる効果的な手続きであることが確認できた。またリマインド再学習効果・明瞭群では,言語想起の正回答が第2回から明瞭に増加し,無回答の回数が第3回リマインド課題から明瞭に減少したことから,LD児においても,学習後のリマインドと正答提示により,未忘却の記憶内容と提示された言語情報の再固定化が効率的に生じたことを指摘できた。 令和元年度には、一斉指導型の国語学習教材の開発とその効果の検討を行った。LD児5名を対象として、漢字書字の指導課題として、画要素の選択による指導課題を作成し検討した。画要素の選択による指導課題によっても、反復書字による指導課題と同程度の効果が得られたことを確認できた。これより、一斉指導型の課題として、画要素の選択による指導課題が有効であることを明らかにした。
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