①法務省矯正局少年矯正課と調査内容の協議を行い、調査協定書・調査ガイドラインを作成し、茨城農芸学院、多摩少年院、東日本少年矯正医療・教育センターに在院する発達障害等の発達困難を有する非行少年を対象に、彼らの抱える発達困難や支援ニーズについて面接法調査を実施した。178名の少年に対する面接・発達相談を通して、少年の抱える各種の発達困難や不安・ストレス等について丁寧に話を聴きながら、「不安の原因の可視化」「問題の共有」「解決方法をともに考えていく」という「対話的で伴走的な発達支援アプローチ」の有効性について確認できた。少年はその過程で「安心」「信頼」を回復し、教官の指導を受け止め、発達支援の意義を理解できるようになったため、少年の成長・発達を一気に加速させていくのである。その上で、現代に適合する基礎的環境整備、合理的配慮に基づく発達支援の提供や少年院独特のルールの改善、学校教育の導入等が、当面する緊要な改善課題である。 ②北欧5か国における子ども虐待対応・防止に関する当事者中心の権利擁護システムの特徴と支援課題を訪問調査を通して検討した。子ども虐待防止支援センターの基本システムと業務内容は共通しており、虐待等によって危険にさらされている子どもを対象に、子どもの保護、医学的診断と治療、司法面接・裁判上の手続き、心理療法、児童福祉サービスへの移行支援、家族療法・家族の再統合支援が行われている。これらの業務担当は基本的に子ども虐待防止支援センターに一本化されていることが最大の特長である。日本においても子ども虐待防止・支援は喫緊の課題である。北欧諸国の対応例を参考に、子どもの視点にたった虐待防止・被虐待対応(家族支援含む)の体制構築に取り組むことが緊急に求められている。
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