研究実績の概要 |
わが国には客観的にろう児の手話力を評価できるテストバッテリーは、武居(2010)の「手話文法理解テスト」のみである。しかし、内外の手話研究者によって、ろう児の手話語彙や文法理解を評価できるテストがすでに開発されているため、これらの資料を収集し、日本手話版手話アセスメントパッケージ作成のアイディアを得ることを目的とした。 アメリカ手話やイギリス手話にはオンラインで評価できる手話語彙評価法があり、その内容や刺激語選択の方法、刺激語の難易度の測定法などについて、文献調査を行い、必要に応じて、メールでコンタクトを取り、情報収集を行った。特に参考になるものとしては、アメリカ手話とイギリス手話の語彙理解テストおよび表出を評価することのできる評価法(Wolfgang, Roy, and Morgan, 2015)や音韻、形態、文法、談話の4つの階層で評価できるオランダの総合的手話アセスメントツール(Hermans, Knoors, and Verhoeven, 2009)が挙げられた。 そのうえで、日本手話の語彙力を評価できるものとして、理解と表出の両方を評価できるテストを作成することとした。理解については、すでに日本語版語彙力評価法として確立している「絵画語彙検査」をベースにして、手話の写像性の要因を考慮した刺激語を再選択し、日本手話版絵画語彙検査を作成することとした。 また、表出を見るものとして、指定時間内に与えられた条件を満たす語彙をできるだけたくさんあげてもらい、その合計数で語彙力を評価する語彙流暢性検査の日本手話版を作成することとした。平成29年度には、日本手話版語彙流暢性検査が実際に使用可能なものになるかどうかを検討するためにパイロットスタディとして、成人ろう者4名に実際に行ってもらい、作成可能性について検討を行った。
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