研究課題/領域番号 |
17K04930
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
武居 渡 金沢大学, 学校教育系, 教授 (70322112)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 手話 / 語彙 / 文法 / 評価 / テストバッテリー / 聴覚障害児 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、表出性手話語彙評価法として、語流暢性検査の手話版を作成した。日本語版では、意味流暢性課題と文字流暢性課題でそれぞれ3問ずつ課題を設定し、1分間でそれぞれの課題を満たす単語をできるだけたくさん挙げてもらい、その総数によって表出性の語彙力を評価するものである。今年度作成した手話版語彙流暢性検査についても、意味流暢性課題3問と音韻流暢性課題5問を作成した。手話版意味流暢性課題は、日本語版と同様の課題を用いた。また手話には文字がないため、日本語版の文字流暢性課題を援用することは難しかった。そのため、手話言語の音韻に相当する手型や運動、位置に関する課題を設定し、音韻流暢性課題5問を作成した。例えば、「両手の手の形が同じ手話を1分間でできるだけ多く挙げる」「1本指の手の形を用いる手話を1分間でできるだけ挙げる」のような課題を5課題設定した。 平成29年度から30年度にかけて、標準値を得るため成人ろう者に対し、同課題を実施し、各課題の平均や分散などを算出した。また平成30年度後半には、パイロットスタディとして様々な年齢の聴覚障害児に対してこれらの課題を実施した。その中で、一部の課題については、小学部1年生、2年生では課題としての難易度が高く、表出語彙数が著しく少ない課題もあり、最終的にどの課題を用いるのかについての検討を行った。これらから、手話版語彙流暢性検査が聴覚障害児の手話語彙力を測定する検査として使用できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手話語彙評価法については手話版語彙流暢性検査が使えることが明らかとなり、聴覚障害児でもデータを取り始めた。ただし聴覚障害児では、子どもの聴力や手話環境、養育者の手話に対する考え方など、手話の獲得や発達に関しては、単に年齢だけの要因では説明できないため、多くの聴覚障害児に対して実施し、おおよその発達段階を提示することを今後行いたい。 また研究成果は、国内の学会で発表を行うとともに、海外の手話研究者と意見交換を行い、平成31年度の研究計画についての示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、より多くの聴覚障害児に対して手話版語彙流暢性検査を実施し、聴覚障害児の手話語彙の発達について考察を行う。また、すでに研究代表者が開発した日本手話文法理解テストと手話版語彙流暢性検査の成績の関係について検討を行う予定である。 なお、研究成果については日本特殊教育学会やその他国際学会において発表するとともに、オランダ、スウェーデン、台湾の手話研究者と研究交流を行う予定である。手話版語彙流暢性検査は他の手話言語においても翻訳が容易であることから、同検査の結果の国際比較を行うための打ち合わせも行うことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
聴覚障害児のデータ収集に係る旅費が想定より少なかったことに加え、先方負担の出張に合わせてデータ収集を行うことができたケースもあったため、次年度使用額が生じた。
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