研究課題/領域番号 |
17K04931
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
別府 哲 岐阜大学, 教育学部, 教授 (20209208)
|
研究分担者 |
加藤 義信 名古屋芸術大学, 人間発達学部, 名誉教授 (00036675)
工藤 英美 愛知みずほ大学短期大学部, 生活学科, 講師(移行) (90803726)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | メタ表象 / 自閉スペクトラム症 / 心の理論 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症児におけるメタ表象の能力を検討するため、工藤・加藤(2014)が考案した多義図形課題の2枚提示課題と1枚提示課題を用いた。工藤・加藤(2014)は、1枚提示課題で多義図形課題の理解が可能なものは、1つの現実(ここでいえば多義図形)に2つの表象(2つの見え)を付与する必要がありメタ表象能力を形成しているといえるが、2枚提示課題の場合は2つの現実(同一ではあるが2枚の多義図形)それぞれに別の見えを付与すればよいので、メタ表象は必要ない課題としている。そして、定型発達児の場合、3歳児は1枚提示課題も2枚提示課題も正答できないのに対し、4歳児になると2枚提示課題のみ正答率が上がること、5、6歳児になると1枚提示課題の正答率も上がることを明らかにした。今回は、知的要因を排除するため、知的に遅れのない自閉スペクトラム症幼児を対象に、新版K式発達検査によって算出された言語性発達年齢で分類した3歳児群28名、4歳児群71名、5歳児群19名について、1枚提示条件か2枚提示条件に振り分け、上記の点を検討した。その結果、正答反応(2つの見えを付与できた反応)についてみると、4歳児群では1枚提示条件でも2枚提示条件でも正答率が低いこと、一方5歳児群では両条件で正答率が50%を超えるようになることが示された。特に4歳児群で、1枚提示条件だけでなく2枚提示条件でも正答率が低いことは、定型発達の4歳児群とは異なる結果であった。このことより、自閉スペクトラム症児におけるメタ表象形成のプロセスと質は、定型発達と異なる可能性が示唆された。ただし今回の結果では3歳児群、5歳児群は人数が少なく今後さらにデータを収集した上で、発達的変化を検討する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
知的に遅れのない自閉スペクトラム症児について、一定数の実験参加者に対し、多義図形課題と心の理論課題を実施することができた。定型発達児についても、現在データを収集中である。自閉スペクトラム症児について、言語発達年齢4歳児群は、統計を行うのに十分なデータが収集でき、その分析も進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
多義図形課題と心の理論課題について、特に知的遅れのない自閉スペクトラム症児で、言語性発達年齢の5歳児群と3歳児群の実験参加者を増やす必要がある。そのため、従来のフィールドに加え、別のフィールドにも対象を広げ、実験参加者を増やすこととし、それを開始している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
DVDなどの消耗品が少なくてすんだこと、関連書籍が購入が遅れたことなどによってこの状況となった。関連書籍の購入が次年度にずれることで、その分を使用することになると考える。
|