研究課題/領域番号 |
17K04939
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
立入 哉 愛媛大学, 教育学部, 教授 (90294777)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 聴覚障害 / 難聴 / 一側性難聴 / 補聴器 / クロス補聴器 / 音源定位 / 左右時間差 / 左右音圧差 |
研究実績の概要 |
本研究では、新発想クロス補聴器(EHIME:Extend-wired Hearing Instrument for Mono-hearing Ear)の試聴用器種の整備を行った。RIC補聴器本体とRICのオープン型レシーバを専用コードで接続する構造を有しており、立入が特許を出願した。この補聴器の汎用化に向けて,コネクタ部分の開発をR社に委託し、プロトタイプの開発を行った。従来のBaby型補聴器の筐体とコネクタを利用することで、EHIMEの試聴器を製造できた。本体の開発に並行して、対象児にフィットする耳に掛けるアダプタを開発し,試聴用EHIME本体を整備した. 次に、成人に対する評価法であるノイズ下の語音明瞭度による評価法と実耳による評価法を小児に適用した。実耳での評価については、小児の頭部は成人に比べて小さいことから、小児特有の両耳間減衰量を実測し,結果を周波数特性の決定に適応することができた. 一側性難聴者がもっとも困り感を感じる方向感について、装用による音源定位力の向上を評価した。この結果、クロス補聴器の装用により、音源定位力は一時的に下がるが、装用継続により、補聴器からの音のmix度合いにより方向が分かるなど、学習により音源定位力が向上することがわかった。加えて、学習によって向上する原理をKEMAR(疑似頭・疑似耳)を用いて、音圧差・時間差を精査し、その理由を明らかにできた。 上記の研究と並行して、EHIMEを一側性難聴児に貸し出し、実際に教室で使用する試聴を5名に対して行った。5例とも反対側からの音の聴取ができること、音源定位が可能になったものの、うち3名は有線式であることを理由に中断し、残る2名はワイヤレス方式のクロス補聴器に移行した。EHIMEの常時装用には至らなかったが、クロス補聴器の体験を行うことができる容易・簡便なツールとしては有効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的な発表を2020年3月に、九州大学で行う予定のシンポジウムで発表する予定であったが新型コロナウィルス感染予防策として、開催が中止となったため、最終的なまとめの発表ができていない。本研究の最終報告をするのにふさわしい全国規模の学会において、単なる演題ではなく、シンポジウムなど十分な時間が確保できる場での成果発表を計画する。
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今後の研究の推進方策 |
有線式クロス補聴器は2017年には、多くの補聴器メーカーがクロス補聴器のラインアップを持っていなかったため、有望な方策と思っていたが、現在、多くの補聴器メーカーが無線式クロス補聴器のラインアップを揃えてきた。国内の補聴器メーカー一社については、無線クロスの技術を持っていないため、引き続き、有線式クロス補聴器の製造について、製造の検討を続けていただいており、プロトタイプの製造には至っている。 クロス補聴器の評価研究で音源定位について詳しく分析する手法を獲得できた。2019年より、盲難聴者が片側の補聴器のみで音源定位することに困難を感じ、補聴器を両耳装用を試みることにあった。最初は1台の(片側の)補聴器の方がまっすぐ歩け、補聴器を両耳にするとふらついてしまう状況だった。しかし、装用を継続することで、両耳装用の方が歩行に都合が良くなった。つまり、一側性の期間が長期に渡っていても、両側の状態で生活場面で使用することが学習となり、結果、両耳による音源定位力が向上した。本研究で述べた補聴器装用下での学習による音源定位力の向上については、クロス補聴器だけではなく、他の補聴器の両耳装用にかかわる課題であること、特に盲難聴者における補聴と音源定位についての研究に発展している。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に九州大学にて開催される予定であったシンポジウムにて、最終の成果発表を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染予防策として、開催が中止となった。研究遂行上、最終報告を行う必要があるため、研究期間を延長し、2020年度に開催される別の機会で成果発表を行う。本研究の最終報告をするのにふさわしい全国規模の学会において、単なる演題ではなく、シンポジウムなど十分な時間が確保できる場での成果発表を計画する。
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備考 |
各種携帯端末にて、聴力の左右差を聴力ではない方法で測定するアプリケーション。 admin/8931にて使用可能。
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