研究課題/領域番号 |
17K04940
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
鈴木 恵太 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (50582475)
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研究分担者 |
柳林 信彦 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (30516109)
藤枝 幹也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (60209020)
大井 美紀 高知大学, 教育研究部医療学系看護学部門, 教授 (70314987)
是永 かな子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (90380302)
喜多尾 哲 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (70724615)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発達障害 / 二次的障害 / 学校適応 / アセスメント / 指導/支援モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、発達障害の二次的障害やその可能性のある子どもなど学校不適応に対して、その「予防」と「回復」を包括的かつ段階的に捉える教育支援モデルを開発することである。「予防」とは通常学級において、集団/個人の特性に応じた「分かる・参加できる」指導の展開を図るものであり、「回復」とは学校内や専門機関において、個人の特性や課題に応じて主に医学的アプローチから解決を図り学級や学校への復帰を図るものである。 今年度の成果としては、この教育支援モデルの具体化を図るとともに、いくつかの実践的取り組みを行った。まず、本研究で用いる教育支援モデルについて、主たる指導の場から3レベルを設定した。Primary levelでは通常学級内を主たる指導の場として、集団/個人の特性評価に基づいた「分かる・参加できる」ための指導/支援方略の展開を図る。Secondary level/Tertiary levelでは、特別支援学級や保健室など学校内または専門機関など学校外を主たる指導の場とし、個人の特性や課題に応じて主に医学的アプローチから解決を図り、学校/学級への復帰を図るものである。 今年度は、主に研究フィールドにおける体制整備を行った。教育支援モデルに主に関わる諸機関(大学・学校・教育委員会・医療機関・福祉機関等)で会議を開催して実戦に向けた協議を行うとともに、主に関わる教員のスキルアップを狙った研修会を行った。それらは一般教員・指導員を対象とした発達障害の特性理解と指導に関する公開講座や、WISCなど知能検査に関する研修会、心理セラピーなどに関する研修会であった。また、本教育支援モデルの大きな鍵項目となる子どもの特性評価の方法について検討を行った。その結果、Primary levelで用いるアセスメントについて学校適応に関する新たな質問紙の導入を進めることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、発達障害の二次的障害やその可能性のある子どもに対して、その「予防」と「回復」を包括的かつ段階的に捉える教育支援モデルを開発することである。 今年度は、教育支援モデルの実践に向けた具体的な体制整備を行った。まず、主たる研究フィールドとなるA県B市において、モデル実践に関わる諸機関が集まる会議を定期的に開催した。会議は2回開催され、大学、A県教育委員会、B市教育委員会、県立病弱特別支援学校、情緒障害短期地聴施設、児童相談所、A県医療センターから出席を得た。会議では、諸機関の連携の具体化や、モデルで使用するアセスメントや指導法およびその実戦に向けた研修会の計画などモデル実践に関わる実際的なフレームについて協議した。 次に、モデル実践に関わる教員・専門職のスキルアップを狙った研修会を開催した。それらは、一般学校教員や学童保育指導員を対象とした発達障害の特性理解と特性に応じた指導に関する公開講座や小中学校の教員を対象としたWISC-IV知能検査の実施手続き等に関する研修会、心理職等専門職向けの心理セラピー研修会などであった。例えば、公開講座は、2017年10月~2018年2月の期間で全11回が行われ、発達障害や学校不適応などの特性と特性評価法、特性に応じた指導/支援法に関する実践的な内容が取り上げられた。 さらに、アセスメント法についても検討を進めた。特に通常学級での「分かる・参加できる」授業づくりは本モデルの最も重要である。計画では、行動評価法としてSDQ(Strength and Difficulties Questionnaire)、授業づくりの特徴としてユニバーサルデザイン授業づくりチェックリストを用いることとしていたが、これに加えて、子どもの学校適応度を測る評価法の導入が考えられたことから、国内外の研究を検討し評価法の選定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、発達障害の二次的障害やその可能性のある子どもに対して、その「予防」と「回復」を包括的かつ段階的に捉える教育支援モデルを開発することである。 次年度は、モデル実践に関する実際的な取り組みを行う。まず、アセスメント法の確立について、特にPrimary levelでの行動評価、授業づくりの特徴に加えて、子どもの学校適応に関する評価法を導入することとした。国内外の文献を検討したところ、Student Engagement Instrument(SEI)(Appleton, Christenson, Kim and Reschly, 2006)の有用性が考えられた。SEIは欧米を中心に近年報告例が多い質問紙であるが我が国では標準化されていない。SEIは子どもの適応について、teacher/student relationship, control and relevance of school work, peer support at school, future aspiration and goals, family support of learningの領域から広く捉えるもので、全35項目の自記式質問紙である。回答も簡便でかつ採点方式も簡便であることから学校適応のスクリーニングとして適切と考えられた。本評価法に関してはユバスキュラ大学と共同して導入に向けた準備を進めていく。 次に、本モデル実践について実際的な取り組みを開始する。また昨年度同様、関係する教員・専門職のスキルアップを図る研修会を進めるとともに、Primary / Secondary / Tertiary の各レベルの実態調査を進め、本モデル導入後の効果検証に繋げる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、主に研究の実施における体制整備に焦点を当てて計画を進めた。その中で、研究に関わる一般教員・指導員・専門職員のスキルアップを図る研修会の実施の重要性を認識するとともに、子どもの特性理解に関する新たなアセスメントの導入を図る必要性を感じるようになった。 また、平成30年度には研究代表者の異動することとなった。 ここから、研修事業に関する教材等の諸費用と、新たなアセスメント法導入にかかる英文校閲などの諸費用、および研究代表者の移動旅費などに使用する予定である
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