研究課題/領域番号 |
17K04959
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
加藤 美朗 関西福祉科学大学, 教育学部, 准教授 (40615829)
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研究分担者 |
蓑崎 浩史 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (20711170)
嶋崎 まゆみ 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (70319995)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝性疾患 / 知的障害 / 特別支援学校 / 在籍状況 / 障害特性 / 教員の知識 / 教員のニーズ |
研究実績の概要 |
本研究ではこれまでに、全国の特別支援学校を対象とした遺伝性疾患のある児童生徒の在席調査(研究1)を行い、その結果に基づいてPrader-Willi症候群やルビンシュタイン・テイビ症候群、Smith-Magenis症候群などの6つの遺伝性疾患を担当する教員を対象に、それら症候群の代表的な行動表現型に関する知識の有無や、教員からみたそれらの症候群のある児童生徒の困難について質問紙調査を行った(研究2)。令和3年度にはこの研究2の結果をまとめて論文化して特殊教育学研究へ投稿した。有効回答は269件(回答率55.3%)で、行動表現型の知識については、たとえばアンジェルマン症候群では、質問項目すべてで「知っている」という回答の割合が8割以上であったが、22q11.2欠失症候群ではすべての項目で「知らない」という回答が約5割以上あった。各症候群が抱える困難については、たとえば行動面での困難についてSmith-Magenis症候群では「とてもある」という回答が9割以上であったが、ウィリアムズ症候群では4割弱であるなど、教員の知識の有無や児童生徒の抱える困難について、症候群ごとの違いが明らかとなった。今後はこられの結果に基づいて障害特性や有効な支援方法について資料を作成することで、個々の障害特性に基づく支援の確立に寄与できると考える。 なお研究2では児童生徒の抱える困難について教員に自由筆記による回答を求めており、令和3年度はその結果の分析を引き続き行った。さらに本研究では研究3として、研究1、2の結果、および上記6症候群の障害特性や支援例をまとめた冊子を作成して研究協力校に提供する予定であるが、令和3年度には、冊子作成のための追加研究として、Prader-Willi症候群の行動マネジメントについて、国内外の文献検討を行い、その結果を論文化して関西福祉科学大学研究紀要に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は遺伝性疾患に関する自主シンポジウムを日本特殊教育学会で企画し、全国の特別支援学校を対象に児童生徒の遺伝性疾患の在籍状況調査(研究1)を実施した。平成30年度は、研究1の結果を日本特殊教育学会で発表し、遺伝性疾患を含む教育実践事例書籍の共編著を行った。また、遺伝性疾患の展望論文を日本学校心理士会年報に投稿した(加藤, 2019)。さらに「遺伝性疾患のある児童生徒の担当教員の支援ニーズ」調査(研究2)を実施した。令和1年度は、研究1の結果を特殊教育学研究に投稿し(加藤ら, 2021)、研究2の結果を日本特殊教育学会で発表した。加えて研究2の自由筆記回答の分析、Smith-Magenis症候群を対象とした調査を行った。さらに、日本行動科学学会ウィンターカンファレンスでのシンポジウム企画および国際Prader-Willi症候群学会で研究発表を行った。 令和2年度は、研究2の質問紙調査の論文作成および自由筆記の分析を、遺伝性疾患に関する啓発冊子作成のための資料収集を始めた(研究3)。また、Smith-magenis症候群の調査結果を日本特殊教育学会で発表し、「特殊教育学研究」に投稿した。令和3年度は、研究2の結果を特殊教育学研究に、Prader-Willi症候群の行動マネジメントに関する文献検討を関西福祉科学大学研究紀要に投稿した(加藤, 2021)。さらに啓発冊子作成のための資料整理研究2の教員の自由筆記の内容の分析を引き続き行った。 なお、この自由筆記データの分析作業や啓発冊子作成に予測以上の時間を要していること、およびコロナウィルス感染による、アルバイト確保を含むデータ処理等の活動の困難を理由に補助事業期間の延長を申請し認められたことから、進捗状況の区分を(3)としている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度には、平成30年度に実施した研究2「遺伝性疾患のある児童生徒の担当教員の支援ニーズ」の自由筆記回答のテキストマイニングを用いたデータ処理および結果の検討をまとめて論文化し、学会誌に投稿する予定である。加えて、研究2の研究対象であり、なおかつ日本語の文献等が対象とした症候群の中で最も少ないと考えられるルビンシュタイン・テイビ症候群の心理社会的支援に関連する文献検討を、主に海外の文献を中心に行い、その結果を日本特殊教育学会第60回大会で発表するとともに、論文化して投稿する予定である。さらに、これまでの先行研究の概観や研究1および2、追加研究等の結果の結果に基づき、本研究2の対象とした6症候群の遺伝性疾患のある児童生徒の行動特性とその理解に関する啓発および支援のあり方に関する示唆を令和4年度後半には冊子としてまとめ、研究協力校を中心に配布する予定である(研究3)。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度には、研究2の自由記述回答のテキストマイニングを活用したデータ処理(抽出語の分析および仮説のコード化等の作業)、および研究成果や各症候群の障害特性や教育的支援の方法等をまとめた冊子の作成および送付を予定していたが、新型コロナウィルス感染のためにどちらの作業についても進捗が遅れたため、補助事業期間の延長を申請してこれらの作業や作成に係るアルバイト料および印刷費、郵送費について、令和4年度に予算執行を含めて実施するように変更した。以上の理由により現時点では未執行額が生じている。令和4年度には、これまでの先行研究の概観や研究1および2、追加研究等の結果の結果に基づき、本研究2の対象とした6症候群の遺伝性疾患のある児童生徒の行動特性とその理解に関する啓発および支援のあり方に関する示唆をまとめたものを令和4年度後半には冊子として印刷し、研究協力校を中心に配布する予定である(研究3)
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