本課題研究では、保育活動から小学校生活科にかけて行われる身近な自然を用いた体験活動・環境学習において、主に視覚障害児が晴眼児とともに活用可能なバリアフリー教材の開発を行っている。特に直接触って認識ができない動物を対象とした教材製作を試みており、平成30年度までに見えないコード(スクリーンコード)を使った印字情報の読み上げやタブレット端末との連動を図った野鳥カードを試作し、視力に頼らない文字情報把握を可能にした教材を作成した。 研究最終年度となる平成31年度(令和元年度)は、図示表現のバリアフリー化を試みた。市販の動物カードはイラストや写真で動物の特徴を示しているが、視覚障害児には認識ができない。そこで立体イメージプリンターによる凹凸を施し、図示表現を指で触って認識できるようにした。これにより、文字情報だけでなく動物のイラストといった図示表現についても、視力に頼らず認識可能なバリアフリー動物カードが完成した。試作したバリアフリー動物カードは、文字認識の困難な識字障害児や未就学幼児にも活用が期待できるとの評価をいただいている。 またバリアフリー教材の必要性を検討するため、平成30年度に視覚障害者を対象として行ったアンケート結果をまとめ、環境情報科学論文集33にて報告した。幼少期の自然体験や盲動犬以外の飼育経験は野生動物に対するポジティブな印象、視覚障害による認識困難さはネガティブな印象につながることが示唆され、幼少期の自然体験活動をサポートするバリアフリー教材の有用性を裏付けるものと考察している。 今後は得られた成果を基に、実際の現場での活用を想定したバリアフリー教材の充実を図っていく。さらにバリアフリー教材を活用した学習プログラムを構築し、教材およびプログラム評価と改善を行っていき、身近な自然を活用したインクルーシブな保育活動・環境教育に役立てていくことを目指す。
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