研究課題/領域番号 |
17K04965
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐々木 敦 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (40215710)
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研究分担者 |
佐藤 英樹 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 助教 (20235378)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 視覚障害 / 色識別装置 / QOLの向上 |
研究実績の概要 |
本研究は視覚障害者の生活の質を向上するための支援機器を開発することを目的とする.視覚障害者が煩わしさを感じることなく色を音により識別できる携帯可能な小型で安価な支援機器を開発し,日常生活で違和感がなく簡単に対象物の色を読み取ることでより自立した生活を送ることを支援する. 当該年度では,RGB値をHSV(色相,彩度,明度)に変換して色の識別を行う色識別手法の確立し,必要な開発環境の整備(基板加工機の導入とプログラム開発環境の整備),プロトタイプの製作および視覚障害者による試作機の評価を行った. 本研究で用いた色識別手法は,カラーセンサからのRGB値をもとに,色相環(各色を円周上に配置したもの)のどの位置になるかを計算で求めて色を識別するものである.被測定物は固形物とし,LEDで照明して近接させて測定を行い,マルセン色相環の基本5色(赤,黄,緑,青,紫)と中間5色(黄赤,黄緑,黄青,青紫,赤紫)の10色を外光等の影響なく識別できた. プロトタイプとして汎用のモジュールで構成された色識別装置を名刺サイズの以下のケースに収めたものを製作した.それぞれのモジュール(マイコンボード,カラーセンサ,通信モジュール,バッテリー)は基板加工機で製作した専用の基板に取り付けた.当該年度に行われたJapan AT Forumに参加された視覚障害者の方に評価をしていただき,握りやすさやボタンの押しやすさに関して改善点のアドバイスを得た.色の読み上げに関しては概ね良好とのことである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では,RGBカラーセンサを用いた色識別手法の確立し,日常生活でよく使用される10色の色を識別できるようになった.色識別装置の開発に必要な開発環境として,マイコンボードとスマートフォンのプログラミング環境の整備,装置の小型化のための専用基板加工システムの整備を行った. 評価用プロトタイプを製作し,Japan AT Forumに参加された視覚障害者の方に評価をしていただいた.色の読み上げに関しては概ね良好の評価を得たが,白色と黒色の識別について改良点があった.センサー部の握りやすさの改善とより簡単な操作性についても改良点があった. 現在,初期の評価用プロトタイプの改良を行い貸与用の実機を製作するとともに,全国KOSENネットワークを通じた盲学校への評価依頼を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は評価結果をもとに色識別装置のブラッシュアップを行いより実用性の高いものにし,学会発表および連携機関を通した情報発信に重点をおいて研究を進める.装置開発については操作性と握りやすさの向上,白色と黒色判別手法と精度の向上,発話部分を一体化したスタンドアローンタイプの開発を行う. ニーズ調査は装置の改良や機能の充実のために大変重要であり,視覚障害者を招いたフォーラムでの展示・発表,盲学校・特別支援学校との連携を強化する.そのために,スマートフォンによる発声を必要としないスタンドアローンタイプの色識別装置を15セット追加製作して評価用実機を充実させる. 平成31年度は色識別装置をさらにブラッシュアップし実用化レベルに高め,学会発表および連携機関を通して装置の普及のための情報発信に重点をおいて研究を進める.装置開発についてはスタンドアローンタイプの改良と表面実装部品を使用した小型化を進める.色の変化を観察する理科実験にも対応できるように,液体の色識別とその変化がわかる手法を検討する.実用化レベルの色識別装置を製作し,普及のための使用マニュアルを作成して公開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初使用予定額より実支出額が少なくなっている原因は,スマートフォン等の物件費の値下がりと研究代表者の体調不良による研究打ち合わせのキャンセルによるものである. 次年度は評価用実機の数量を確保することと,情報発信としての発表・展示に関する経費として使用する.
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