本研究は視覚障害者の生活の質を向上するための支援機器を開発することを目的とする.視覚障害者が煩わしさを感じることなく色を音により識別できる携帯可能な小型で安価な支援機器を開発し,日常生活で違和感がなく簡単に対象物の色を読み取ることでより自立した生活を送ることを支援する.当該年度では,白色と黒色の判別を可能なタンドアローンタイプの評価機を作成し,機器の発表および展示を複数回行った. 本研究で用いる色識別手法はRGB値をHSV(色相,彩度,明度)に変換して色相(Hue値)をもとにして,色相環のどこに位置するかによって色を識別するものである.この方法でマンセル色相環の基本5色とその中間5色の計10色を識別できたが,白色と黒色はこの方法では識別できない.白黒の識別手法として,彩度と明度に加えてRGBセンサーの全光量値を用いることによって識別が可能となった.実際に試作機を視覚障害者等に評価いただいた結果から,装置単体で発話が可能なものが望まれていること,また,電波を発する機器やスマートフォンの仕様が制限されている場合も多くあり,スタンドアローンタイプの設計・製作を行った. 当該年度に行われた国際会議において開発したスタンドアローンタイプの発表を行った.また,日本福祉工学会およびJapan AT フォーラムにおいて同タイプの発表・展示を行い概ね良好な評価を得たため,より実用性の高いプロトタイプを製作した.本装置の普及に関しては,全国KOSEN支援機器開発ネットワーク(Kosen-AT)のHPでの紹介を行うとともに,日本支援技術協会の支援によるキット化販売を進めている.
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