研究課題/領域番号 |
17K04967
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
田島 世貴 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 第三診療部(研究所併任), 医長 (30420722)
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研究分担者 |
金 樹英 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 第三診療部(研究所併任), 医長 (90401108)
西牧 謙吾 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院(研究所併任), 病院長 (50371711)
豊田 繭子 (鈴木繭子) 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 第三診療部(研究所併任), 心理療法士 (40726767)
東江 浩美 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 リハビリテーション部(研究所併任), 言語聴覚士 (40725090)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 適応行動尺度 / 睡眠覚醒リズム障害 / 就労支援 / 就学支援 / 復学支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、睡眠覚醒リズム異常が並存する自閉スペクトラム症において、基本的生活スキルの不足が就労などの自立に向けた支援継続に困難をきたしている例を対象としている。それらの症例に対して、介入なし群、睡眠覚醒リズムの改善のみ介入群、基本的生活スキル訓練と睡眠覚醒リズムの改善を同時に行う介入群間で支援サービス受給の継続期間の差が認められるかどうかを検討する計画である。 平成30年度は、平成29年度に引き続き10名の患者から延べ8500時間の睡眠計測を行い、外来での睡眠衛生指導を行なった。入院による生活訓練を希望したものは0名であった。平成29年度に蓄積された症例と合わせると、平成31年3月末時点で、生活スキル訓練介入群4例、外来での睡眠覚醒リズム治療のみ介入群20例、介入なし群5例のデータがえられた。 また、特別支援学校高等部在籍患者の就労に向けた支援に睡眠衛生指導を組み合わせて実施し、就労に結びついたケースが1例、自立支援局理療科在籍生に対して睡眠衛生指導を行い、資格取得につながったケースが1例、得られた。中学生に対する睡眠衛生指導で不登校状態から復学あるいは高校進学したものが3例得られた。 当院受診患者コホートが、生活スキルの不足で適応性が低下している群から、本人の発達状態と目標のミスマッチによる不適応をきたした群へと推移しているのは平成29年度から継続している状況である。そのため、就労あるいは復学に際して、生活スキル向上よりも、本人および家族・支援者の障害理解・受容が課題となるケースが圧倒的多数であり、今後の課題として、生活スキルを切り口とした医療から支援者へのフォードバックを行うことも重要であると考えられた。 平成30年度は、国内学会で5件(日本児童青年精神医学会)、国際学会で3件(IACAPAP2018)の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度に蓄積された症例と合わせると、平成31年3月末時点で、生活スキル訓練介入群4例、外来での睡眠覚醒リズム治療のみ介入群20例、介入なし群5例のデータがえられた。生活スキル訓練介入が少ない理由として、本人の生活スキルの定着の悪さそのものが就労の困難になるというより、本人の発達特性および知的水準にミスマッチな生活環境設定や就労目標が理由であることが多かったことが考えられる。その問題解決には、本人および家族の障害理解・受容が重要であると考えられた。これらのことから、外来での睡眠衛生指導ケースに大きく偏ることになったものと考察する。
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今後の研究の推進方策 |
患者コホートの変遷から、支援者支援がより重要であることが明らかになりつつあるが、引き続き生活スキル訓練入院ケースを積み重ねる予定である。 並行して、家族への支援としてペアレントトレーニングを導入する。従来のペアレントトレーニングは、本研究の対象となる思春期~青年期の症例を対象としていない。しかし、平成31年~令和元年度の当院児童精神科の臨床で、思春期自閉スペクトラム症者の家族支援を目的としたペアレントトレーニングの実践を行うことが決定され、令和元年5月末から開始される。その際に睡眠状態の調査も行う予定となっており、家族の障害理解・受容の影響を検討する。 教育への支援としては、医療から医師・臨床心理士・言語聴覚士・ソーシャルワーカーなどが学校場面へ出向き、インフォーマルアセスメントを実施する。その評価結果を医療場面での検査結果と合わせて、教育関係者の障害理解・受容を支援する試みを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
もっとも人的資源が必要な生活スキル訓練入院が少ないことから、執行残額が発生している。今後の方針に合わせ、家族支援のためのペアレントトレーニング、教育支援のための学校訪問によるインフォーマルアセスメントに必要経費が生じるため、当該残額はそのために当てられる。
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