研究課題/領域番号 |
17K04969
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
上原 伸夫 宇都宮大学, 工学部, 教授 (50203469)
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研究分担者 |
岩井 秀和 宇都宮大学, 工学部, 助教 (10311599)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
研究2年目にあたる本年度は,「システインの光学純度が金ナノクラスターの蛍光特性に影響するメカニズムの解明」について研究を行った。 先ず,システインの類縁体で光学活性を有するホモシステイン,N-アセチルシステイン,システイニルグリシン,グルタチオンを用いて検討した。特に,システインとはメチレン基一つだけしか構造が違わないホモシステインについては詳細に比較検討した。その結果,これらのシステイン類縁体は370 nmに極大波長を持つ吸収スペクトルを与えず,システインの特異性を確認した。 ついで,D,L-システインの混合比を変えることにより光学純度を調整し,得られる金ナノクラスターの蛍光特性について検討した。興味深いことに,ラセミ状態(D:L=1:1)のとき,蛍光強度は最も小さくなった。このとき,溶液の濁りは最も少なかった。そこで,D:L比や溶液の熟成時間などを変化させ溶液の濁りと蛍光強度の関係を検討したところ,溶液の濁りと蛍光強度には高い相関関係があることを見出した。先行研究の調査結果と上記の結果を比較すると,金ナノクラスターとチオール化合物とが形成する蛍光性化合物は,ポリマー状の水に不溶な化合物であるものと推測される。ラセミ状態において,蛍光性ポリマーの形成が最も低かったのは,ラセミ状態ではポリマー間の水素結合が弱いため,ポリマーの集合体を形成しにくかったためであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度と今年度の進捗状況を研究計画と比較すると,蛍光性発現に関するメカニズムについては,概ね計画通りに進んでいる。 しかしながら,蛍光性発現に関するメカニズムが当初想定したような金ナノクラスターの最表面に結合したチオール化合物によるではなく,金-チオール結合からなるポリマー状物質であることから,分子軌道計算についてはモデルに大幅な修正を余儀なくされている。この点については,若干の遅れは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
【今後の研究の推進方策】 ①当初計画通り,「光学活性物質の不斉識別を蛍光特性の変化として出力するナノ材料の開発」を行なうともに,②モデルに大幅な修正を行った後、分子軌道計算を行う。 ①については,これまで得られた知見を基に,不斉識別を蛍光特性に反映させる新たな系を構築する必要がある。それを進めるとともに,材料化を目指して,ゾルゲル反応を用いて粒子を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の薬品が海外輸入品であり,入荷に時間がかかることから,購入の発注をしていたものの,予算の執行ができなかった。
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