研究課題
最終年度に本年度は,「システインの光学純度の低下による旋光度の増大現象にもとづく不正識別材料の開発とその周辺技術の開発」について研究した。光学純度100%のL-あるいはD-システインに,ごく少量の反対の旋光性を持つシステインを加える,すなわち,わずかに光学純度を低下させることにより,旋光度が増大する現象は,一見,光学純度と旋光度との一般的な関係とは矛盾する。詳細な検討の結果,この現象は金ナノクラスターのランダムな凝集状態が抑制されることで生じることを明らかにした。この原理に基づいて,システイン中に不純物としてごく少量の反対の旋光性を持つものが存在するかどうかを判定できることを確認した。上記の過程において,金ナノクラスターの分散安定剤として添加したポリエチレングリコールが金ナノクラスターの自発的な融合を促進することを明らかにした。金ナノクラスターの融合により金ナノ粒子が生成する。Lこれに伴い,溶液は無色から赤色に変化する。この金ナノクラスターの自発的な融合現象はポリエチレングリコールの分子量に依存し,分子量が200万以上のポリエチレングリコールを用いたときのみ発現する。詳細な検討から,チオール化合物を添加することにより,生成した金ナノ流粒子は崩壊し,溶液は無色となる。この原理に基づいて,チオール基を有するトリペプチドであるグルタチオンを計測する方法を開発した。なお,今年度は研究成果の一部を論文発表することができた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (12件)
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