研究課題
最終年度の最も大きな成果は,化学還元によるLi@C60中性体合成法開発と,それを用いた有機ペロブスカイト太陽電池素子開発である.成果をそれぞれ,論文として投稿・発表することができた.Li@C60中性体化学還元法は,それまで電気化学的な還元によりのみ得られていたLi@C60中性体を,化学的な一電子還元剤を用いる還元により得る方法であり,合成に要する時間および一度に合成できる量が飛躍的に向上した.この方法で重要な点は,一電子還元のみを選択的に行う還元剤(デカメチルフェロセン)の選定,反応前後での溶解度差を利用した単離を行うためのLi+@C60塩と溶媒の選択,の二点である.この方法が開発されたことにより,それまで困難であったLi@C60中性体それ自体の物性評価や素子応用への適用が容易になった.前段の方法で得られたLi@C60中性体を用いて,有機ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層への適用を行った.それまでも用いられていたC60フラーレンのみを用いた電子輸送層は,フェルミ準位のマッチングや電荷輸送能が不十分であった.このC60層に,外形が全く等しく電子を一つだけ多く持つLi@C60中性体を%のオーダーで混入することにより,そのドーピング効果により性能を向上させることができた.性能の向上はLi@C60/C60比が1%の場合が最も高かった(変換効率8.18%, C60のみの膜では4.67%).それ以上のドーピングでは余分なLi@C60の凝集のために性能が劣化したことから,このような影響の抑制が今後の課題である.それ以外の成果としては,カーボンナノチューブを裏面電極として用いたペロブスカイト太陽電池へのLi+@C60塩適用やその他太陽電池向け材料に関する研究があった.最終的に本年度には,査読ありの英文論文で5報の報告を行うことができた.
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 産業財産権 (1件)
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