研究課題
グラフェンは高い電荷移動度を有するため、電子デバイス材料として注目されている。一方、グラフェンをナノサイズ化した、有限の幅を持つリボン状のグラフェンはグラフェンナノリボンと呼ばれている。グラフェンナノリボンでは、エッジ効果や電子閉じ込め効果によりその電子物性が大きく変調される。これまで、アセン前駆体の表面特異的な重合反応を用いたボトムアップ手法によりジグザグエッジを両端に持つグラフェンナノリボンを合成した。吸着させる前駆体分子の表面密度を適切に選択することで、分子長が数ナノメートル程度の短いグラフェンナノリボンの合成に成功している。そして、STMとブレイクジャンクション法を駆使することで、グラフェンナノリボンの輸送特性と局在スピン状態を明らかにした。グラフェンナノリボンを作製した金(111)表面上において、STM金探針と金(111)表面の間の点接触と破断を繰り返すことで、微小な金電極を作製した。針と表面の間に作製された金電極の間にグラフェンナノリボンを捕捉することで分子接合を形成させた。伝導度計測結果の統計的な解析から、数ナノメートル程度の分子長を示すグラフェンナノリボンは高い電気伝導度を示した(>0.1 G0)。ここで、G0は量子化コンダクタンス(G0= 2e^2/h)である。また、分子長が数ナノメートル程度のグラフェンナノリボンについて、密度汎関数法に基づいた理論計算を行った。その結果、両端のジグザグエッジに局在スピン状態が発生することを理論的に確認した。グラフェンナノリボンに特徴的な局在スピンの相互作用により単分子の電気伝導度が変化すること、そして、グラフェンナノリボンの長さに応じて、局在スピンの相互作用の大きさが変化するため、電気伝導度が変調されることを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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