研究実績の概要 |
重元素と磁性元素との相乗効果による新規物性発現の候補となる系として強磁性Heusler合金とBaTiO3 (BTO)との界面の理論解析を行った。前年度までに界面ナノ構造における構造同定と磁性解析手法の技術基盤を確立したため、本年度は実際の物質探索空間を広げ、界面での磁性物理の理解の深化を目指した。Heusler合金Fe3SiとBTOの界面ではFe3Siの界面終端層の効果が非常に重要であり、界面にSiが露出している場合にはSiとの化学結合によりBTOの電気分極が界面で固定され、BTOの電気分極反転の効果が界面まで伝わらないことがわかった。しがたって、界面の電気磁気結合を増大させるため、異種原子層の挿入効果を検討した、その結果Coをわずか1原子層界面に挿入しただけで、界面の電気磁気結合定数はおよそ10倍に増幅された。この結果は原著論文Y. Hamazaki and Y. Gohda, "Enhancement of magnetoelectric coupling by insertion of Co atomic layer into Fe3Si/BaTiO3(001) interfaces identified by first-principles calculations", J. Appl. Phys. 126, 233902 (2019).として発表した。さらに、界面における格子ひずみと磁性の相関を明らかにするために、BTOの電気分極を界面垂直方向から界面並行方向へと変化させ、電気磁気結合への影響を理論解析した。その結果、異種原子を挿入しない界面の場合には界面に存在するSiが界面電気分極を固定するため、格子ひずみの影響が無視できるほど小さくなることがわかった。
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