研究実績の概要 |
強磁性Heusler合金とBaTiO3 (BTO)との界面の理論解析を行った。最終年度前年度までに,界面ナノ構造における構造同定と磁性解析手法の技術基盤を確立し,具体的な系として適用したFe3SiとBTOの界面において界面構造と界面電気磁気結合に非常に大きな相関が得られることがわかったため,BTO表面上の結晶成長の初期過程の理解を深めるために,BTO表面上の遷移金属元素の吸着状態の理論解析を行った。BTO(001)表面の終端状態と遷移金属元素の種類に応じて,化学結合の共有結合性が大きく影響を受け,吸着サイトに影響を及ぼしていることが明らかとなった。この結果は,原著論文R. Costa-Amaral and Y. Gohda, J. Chem. Phys. 152, 204701 (2020).として発表した。また,BTO表面と強磁性Heusler合金との界面における電気分極方向と磁気モーメントや磁気異方性などの磁気状態との相関を,界面歪み効果まで含めて理論解析した。 さらに,フォノンの自由エネルギーと磁気的自由エネルギーの両者を考慮することにより,磁性に依存したフォノンによる磁性へのフィードバック効果を取り入れた,第一原理電子論による有限温度磁性の理論解析手法を開発した[T. Tanaka and Y. Gohda, npj Comput. Mater. 6, 184 (2020).]。これをCoPtなどの化合物に適用することにより,結晶構造の対称性とフォノン振動数の温度依存性との関係を説明するexchange ligand fieldの概念を提唱した[T. Tanaka and Y. Gohda, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 093705 (2020).]。
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