研究課題/領域番号 |
17K04984
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
長井 拓郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 電子顕微鏡ステーション, 主任エンジニア (90531567)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 透過型電子顕微鏡 / 角度分解EELS / ローレンツ顕微鏡法 / 球面収差補正 / 磁気ソリトン |
研究実績の概要 |
球面収差補正装置及び電子線単色化モノクロメーターを搭載した透過型電子顕微鏡を用い、強相関電子系物質の電子自由度の秩序状態を実空間で解析することを試みた。K2NiF4型層状結晶構造を有するマンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4の低温で形成される軌道秩序相(強的軌道秩序相)について、角度分解電子エネルギー損失分光(EELS)法を用いて分析することを試みた。バルク試料をイオンミリング法により薄膜化し電顕観察用試料を作製した。液体窒素冷却試料二軸ホルダーを用いて透過型電子顕微鏡内で試料を冷却し、制限電子回折法により強的軌道秩序を有するドメインの同定と軌道方向の同定を行った。このドメインに対して電子線を照射し、EELS検出器に入射する散乱波の角度を変えながら、角度分解EELS分析を行った。 また、スピン磁気モーメントの実空間観察のために、モノクロメータ収差補正ローレンツ電子顕微鏡法の開発を行った。弱励磁のローレンツレンズを励磁させ、これに対して球面収差補正を行った。さらにモノクロメータを作動させて電子線を単色化することにより色収差を低下させ、ローレンツ電顕像の情報限界を0.6nmまで向上させた。これにより、試料に対して磁場を印加しない状態で、層状マンガン酸化物Nd1-xSr1+xMnO4の結晶格子を観察し、0.62nm周期の格子縞を観察することに成功した。また、希土類金属ジスプロシウムDyの低温で形成されるらせん磁性相を本方法で観察し、1.4nm離れた反転する磁気モーメントと磁気ソリトン、磁場誘起ナノスケール磁気相分離を観察することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強相関電子系物質の構成原子についてHAADF-STEM法およびSTEM-EELS法により実空間観察することは可能であることが確認された。また、スピン状態の実空間観察のために取り組んだモノクロメーターと球面収差補正装置を併用したローレンツ顕微鏡法を開発し、ローレンツ電顕像の情報限界を0.6nmまで向上させ、0.62nm周期の格子縞を観察することに成功した。この高分解能低温ローレンツ顕微鏡法を用いて、らせん磁性を示す希土類金属ジスプロシウムDyの観察を行い、1.4nm離れた反転する磁気モーメントと磁気ソリトン、磁場誘起ナノスケール磁気相分離を観察することに成功した。 全体的におおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
214型層状マンガン酸化物R1-xA1+xMnO4(R:希土類元素、A:アルカリ土類金属元素)の低温で形成される電荷軌道秩序相におけるヤーンテラー変形、電荷及び軌道の配列パターンをHAADF・ABF-STEM法、STEM-EELS法および角度分解EELS法により実空間観察することを試みる。高分解能ローレンツ電顕法を用いて外部磁場印加実験を行い、希土類金属におけるらせん磁性等の変調磁気構造について、磁気モーメントの外部磁場応答を実空間観察することを試みる。得られたローレンツ像を用いて強度輸送方程式法により磁化分布解析を行い、磁気モーメントの実空間観察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料合成用の試薬および電顕試料作製のためのFIB用消耗品に使用可能な予備があり、購入額が少なかったため、次年度使用額が生じた。 論文校閲に係る費用及び論文投稿費を使用する。
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