研究課題/領域番号 |
17K04994
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
古賀 智之 同志社大学, 理工学部, 教授 (10388043)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自己組織化 / マルチブロックポリマー / ペプチド / ナノ材料 / 高次構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、スパイダーシルクの構造的/機能的原理を模倣し、β-シート構造をモチーフとする人工ペプチドの自己組織化概念を合成高分子と融合させることで、優れた力学特性・生体機能・自己修復性を兼ね備えたマルチブロック型ハイブリッドポリマーを新規に創成し、スマートナノ材料の新しいベースポリマーとして応用することを目指している。このような配列制御ペプチドと合成高分子のハイブリッド戦略に基づく様々な機能性高分子材料の創製を進めている。本年度得られた主な成果を以下にまとめる。 (1) これまでの自己組織性オリゴペプチド群(Ala, Leu, Val)に加えて、新たにオリゴフェニルアラニンを採用し、非晶性ドメインとしてポリプロピレングリコール(PPG)とマルチブロック化したハイブリッドポリマーの合成に成功した。また自己支持性フィルムを作成し、その構造や力学特性をペプチドブロックの一次構造の観点から明らかにした。 (2) リビングラジカル重合法によるマルチブロック型ペプチド/ビニルポリマーハイブリッドの精密合成法の確立を進めた。前年度開発したTEMPO由来アルコキシアミン結合を有する環状ペプチド開始剤システムの適用モノマーを拡張するため、TIPNO (2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン-3-オキシル)由来のアルコキシアミンを骨格内に有する環状ペプチド開始剤の新規合成に成功した。この開始剤は、アクリレートおよびアクリルアミド誘導体など様々なビニルモノマーのNMPに適用でき、種々のマルチブロック型ハイブリッドを得られることを明らかにした。 (3) アミノ酸由来ビニルポリマーと自己組織化ペプチドを組み合わせたマルチブロック型ハイブリッドを合成し、温度応答的にタンパク質様の単鎖フォールディングすることを見出した。一分子ナノテクノロジーへの展開が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、様々なアミノ酸配列や鎖長を系統的に変化させた自己組織性オリゴペプチドとポリプロピレングリコールからなる種々のマルチブロックポリマーの合成に成功した。これらポリマーは容易にフィルム化(ナノフィルム化)でき、高い力学特性と自己修復性を併せもつスマート高分子材料となることを見い出した。さらに、これまで困難であったペプチドとビニルポリマーのマルチブロック化を実現する全く新しい合成方法を開発し、本年度はその手法の改良にも成功し、多様なビニルモノマーに適用できるようになった。順調に研究が進捗していると言える。配列制御ペプチドと種々のビニルポリマーからなるマルチブロック型ハイブリッドを自在に合成でき、次年度以降に予定している計画を順調に進めていくことが出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から引き続き各種マルチブロックポリマーの特性/機能評価およびさらなる分子拡張を進めていく。特に、細胞足場材料としての応用を念頭に、各種マルチブロックポリマーフィルムの細胞親和性を評価する。得られる結果や自己修復能などを踏まえて、適切なマルチブロックポリマーを選定し、エレクトロスピニング法によるナノファイバー創製を行う。ナノファイバーの構造/形態/物性を評価するとともに、そのシート化や細胞外マトリックスとしての生体機能評価を進める。また、マルチブロック型だけでなくグラフト型のペプチド-ビニルポリマー・ハイブリッドについても設計し、比較検討を進める。配列制御された人工ペプチドと合成高分子を融合させた革新的ハイブリッドシステムとして高分子ナノバイオ材料の設計戦略の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末ギリギリに使用計画があり予算を残していたが、納品が間に合わずにずれ込んだため。次年度初めに使用する。
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