研究実績の概要 |
当初計画にほぼ対応した以下の結論を得た。(1)色素薄膜中におけるJ会合体の二次元分布計測技術の改良と完成:色素薄膜中におけるJ会合体の二次元分布を計測する技術は前年度までに確立したが、さらに改良を続け、最終的に原子間力顕微鏡と組み合わせて薄膜中のグレインのどの部分にj会合体が形成されているかを評価できるシステムを完成させた。色素薄膜中に目印をつけ、原子間力顕微鏡像と干渉等各種フィルターを装着した光学顕微鏡像の位置ずれを正確に補正照合する操作を確立した。;(2)J会合体を形成する化合物の発見:上記の新システムによって従来色素薄膜中のJ会合体形成量が少なく、その吸収スペクトル形状からは明確にJ会合体であると判断が出来なかった場合についても、部分的に形成されたJ会合体が確認できる事が判った。ある種のビスアゾ色素の末端直鎖アルキルn-CH3(CH)n-1誘導体のうち、従来n=5,6,7のケースについて偏光吸収スペクトルから局所的にJ体が出来たと判断されていたが、今回上記システムによってn=0~4にについても、局所的にJ会合体が生成していることが明確になった。;(3)J会合体形成メカニズムの推定:一方、n=4のの分子の反対側にあるアルキルアミノ基をジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ピロリジニルアミノと替えた場合は影響がはるかに大きくジメチルアミノ基の場合にはJ会合体形成がほとんど起こらない。この顕著な効果は、単結晶X線構造におけるジエチルアミノとピロリジニルアミノに見られる分子間相互作用と関連が在ると考えられる。このようなJ会合体形成に影響する分子の内在的因子と配向膜などの外在的因子の両方がJ会合体形成に影響すると結論できた。J会合体ドメインは繋がっている場合が多く、またグレイン周辺部に多いことから、周辺部の応力がJ体形成に有利な状況を導き、また隣のドメインへも影響し易いと考えている。
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