ナノセルロース等異方性ナノ材料の評価を散乱法や顕微鏡法で精確評価するためには、前段に分級法を用い、ある程度の長さならびに形状を整える必要がある。長さ・形状分布が散乱法における評価精度や顕微法評価におけるアンサンブル評価への影響を与えることは明快であり、一方でナノセルロースはサイズ範囲が広いことからサイズ排除クロマトではその広いサイズ範囲を網羅した分級を行うことはできない。またナノセルロースは粉体状態においては凝集が強く、これを可能な限り分散するための手法を検討する必要がある。 本年度は上記課題において定量的な解を与えることを目的とし、まずは剛直且つ真空化においてのシュリンク等形状変化が起こらない、様々なアスペクト比を有し、且つ、長さ分布の整えられた金ナノロッドを用いた評価を実施した。それぞれの試料について偏光解消動的光散乱評価を実施し、偏光解消動的光散乱法にて求められた並進ならびに回転拡散係数から、Kirkwood-Riseman理論やTirado理論等の形状評価理論式を適用し、分級された金ナノロッドの長軸・短軸長を算出したところ、非常に定量的且つ電子顕微鏡と偏光解消動的光散乱法において求められた計測結果が合致することが確認された。前年度と同様にやや柔軟系であるナノセルロースにおいて定性的に合致する双方の評価結果の解釈について、結果として、この柔軟性が計測結果において影響を与えていることを見出すことができた。これらの成果をFFF2020学会で公開するとともに、本成果を含めた流動場分離法と光散乱等の形状・サイズ評価法の組み合わせによる評価技術についてはIAAM Awardを受賞することとなった。
|