研究課題/領域番号 |
17K05004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡辺 健太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40582078)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 単結晶自立ナノロッド / ZnO / 溶液成長 / 選択成長 / 圧電変換 |
研究実績の概要 |
膨大な量の小型センサをあらゆるものに導入し情報を収集・活用する高度センサ化社会においては、そのセンサ用電源として安価で生体・自然環境に無害な永続的に給電可能な小型自立電源が求められる。その動作原理として圧電変換による機械的振動エネルギー回収技術が注目されている。そこで安価で生体・自然環境に無害な圧電材料およびその作製手法として、圧電性半導体ZnOの単結晶自立ナノロッド配列構造、および前駆体水溶液中でのZnO化学合成を原理とする溶液成長法に注目した。本研究では、バルク単結晶よりも弾性限界歪が2桁高い自立ナノロッドの「ナノ弾性」を利用し、ZnO単結晶自立ナノロッドの微細化・高密度化により配列構造の同じ膜厚のZnO薄膜を超える圧電電荷出力を実現することを目標とした。 平成29年度は、Si(111)基板上にAuを真空蒸着した場合、(111)配向が優勢になること、またAu薄膜/Si(111)基板を用いてZnO溶液成長を行うと、ZnO(0001)配向単結晶自立ナノロッドがAu(111)面上にヘテロエピタキシャル成長すること、を見出した。このZnO(0001)ナノロッド/Au(111)構造は、Au薄膜がZnOのヘテロエピタキシャル成長の下地層としての役割だけでなく、圧電デバイスにおける下部電極の役割も果たすこと、ZnO/Au界面が一般にオーミック接触であることから、圧電変換による環境発電デバイスの実現に有用な技術といえる。また、前駆体溶液に添加剤を導入して溶液成長を行うことで、ZnO単結晶自立ナノロッド配列のアスペクト比を低減し、薄膜化することに成功した。この溶液成長ZnO(0001)薄膜は、先のZnO単結晶自立ナノロッド配列の比較参照試料として用いることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は以下の項目に取り組んだ。 ①ZnO単結晶自立ナノロッドのAu薄膜/Si基板へのヘテロエピタキシャル成長 Si(111)基板上に真空蒸着によりAu薄膜を作製した。XRD評価から、Au薄膜は(111)配向が優先であることを確認した。その後、Au薄膜/Si基板を前駆体溶液中に導入・加熱して溶液成長を行った。Au薄膜上にそのままZnO溶液成長を行った場合、Au(111)面上に(0001)配向したZnO単結晶自立ナノロッド配列(直径~1um, 長さ~10 um, 面密度~106 cm-2)がヘテロエピタキシャル成長することを確認した。今後、ナノロッド配列の高面密度化が課題である。高面密度化の方策として、電子線描画を用いた選択成長の適用や前駆体溶液条件の再検討を考えている。 ②参照用ZnO薄膜のAu薄膜/Si基板へのヘテロエピタキシャル成長 続いて、同じAu薄膜上に参照用ZnO薄膜の溶液成長を試みた。通常の成長条件では自立ナノロッドが形成するため、添加剤を導入して、ZnO単結晶自立ナノロッドの垂直方向の頂面成長を抑制を試みた。結果、ナノロッドのアスペクト比が10から10-2へと低減した。これより自立ナノロッド配列を薄膜化するに成功した。今後、溶液成長条件を検討することで、厚膜化を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、年度初めに大阪大学から東北大学への異動があったため、まず成長系・測定環境の再立ち上げを行う。また、溶液成長ZnOの構造改善(ZnO単結晶自立ナノロッド配列の高面密度化および参照用ZnO薄膜、圧電デバイス作製、およびその圧電応答評価を行う。具体的には、以下の手順で研究遂行する。 ①ZnO単結晶自立ナノロッド配列の高面密度化と、参照用ZnO薄膜の厚膜化・物性評価 ②ZnO単結晶自立ナノロッド配列および参照用ZnO薄膜の、圧電デバイス作製と圧電応答評価 ③単一ZnO自立ナノロッドの物性評価と圧電応答力顕微鏡PFMを用いた圧電応答検出 また、平成31年度は、主に溶液成長ZnO自立ナノロッド配列の圧電応答特性の向上に注力した研究を行う。具体的には、成長窓の高面密度化および前駆体溶液制御により、ナノロッド内部の格子間水素ドナーに由来した残留キャリア濃度の低減を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
招待講演などで出張費が予想を上回ったため前倒し申請を行ったが、前倒し申請額が大きく、結果、残額が生じたため。
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