連続波(CW)レーザーを用いる新規レーザー加工技術により板厚約100μmのカバーガラスに高密度に直径20~100 nmの貫通穴を開けることをめざして研究した。本研究は、アルカエッチング溶液を共存させながら金ナノ粒子のレーザー加熱と基板への熱伝導を利用して加工穴をあける点に特徴がある。エッチング剤として水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)および水酸化カリウム(KOH)を用い、波長532 nmまたは488nmのCWレーザーを顕微鏡の60倍対物レンズで絞って金ナノ粒子に照射ることにより、金ナノ粒子がガラス基板に埋め込まれることが分かった。走査型電子顕微鏡(SEM)によるガラス基板表面の加工穴の観察に加えて、集束イオンビーム(FIB)を用いた断面観察にも挑戦し、断面観察にも成功した。形成された穴の深さを求めるため、FIBによりガラスの上面からの切削を行い、加工時間と深さの関係を調べた。加工穴の深さは当初1μmであった。この理由としては、加工が進むと金ナノ粒子がガラスに埋包され、このため対物レンズの焦点とずれて加熱がうまくいかなくなると考えた。この対策としては、被写界深度の大きい(倍率の低い)対物レンズを用いる、および、対物レンズの焦点位置を加工の進行とともに深くしていく、の2点が考えられた。改良を重ねて、8h程度の照射時間で貫通穴を作製できるようになった。しかし、一度に表面密度高く貫通穴を作製することには成功していない。同時にたくさんの粒子を照射したとき、粒子が基板からはがれてしまうことが問題であった。多焦点レンズを使用して照射スポットの数を増やすことが必要と考えられる。当初の目的である貫通穴の作製ができ、課題として同時に多数のスポットを照射することができれば、技術として大きく進展する。
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