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2019 年度 実施状況報告書

DNA四重鎖の形成に伴うDNAの高次構造変化の一分子観察と理論による研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K05013
研究機関大分大学

研究代表者

谷川 雅人  大分大学, 医学部, 教授 (90332890)

研究分担者 岩城 貴史  大分大学, 医学部, 助教 (60416419)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードG-quadruplex / molecular dynamics / circular dichroism / TIRF microscopy
研究実績の概要

G-quadruplex構造を取ることのできる配列のDNAがタンデムに複数あるときの相互作用を調べた。同じ鎖の中にこの配列が複数あるとき,1か所が四重鎖構造をとると近傍のDNAに捩れ応力が伝搬し,一気にすべての配列部位で四重鎖構造を取ることを示唆する結果を得た。これまでに我々が発表してきた直鎖DNAと環状DNAにおける挙動の違いと併せて考えるため,208kbpのBACDNAに G-quadruplex構造を取ることのできる配列とこの構造を取ることのできない配列を複数導入した。まず,この導入したDNAの影響調べるため,それぞれのDNAでカリウムイオンを含まないときにどのような挙動を示すかをTirf顕微鏡による1分子観察と円偏光二色性(CD)スペクトルの経時変化測定により,配列による有意の差が無いことを確認した。次に,カリウムイオンが存在する溶媒を用いて同様の実験を行った。この結果,CDでは,長鎖中に部分的にあるG-quadruplexは全体の二重鎖構造のスペクトルによって見えなくなってしまった。しかし,Tirf顕微鏡による1分子観察では,相関時間に有意な差が現れた。このことは,G-quadruplexを形成する際部分的に二重鎖構造がほどけるためDNAの捩れ応力が変化し,DNAの高次構造に変化を及ぼしていると考えられる。この挙動について詳細に明らかにするため,線状高分子と環状高分子の溶液中での挙動を再現する計算シミュレーションに,環状高分子で異なる捩れ応力のパラメータを加えるモデルを作成し,どの程度の捩れ応力が実験結果を再現できるのかを明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成30年度の成果をもとにして,Idarubicineやirinotecanなどのテロメアーゼ阻害剤やトポイソメラーゼ阻害剤がどのようにG-quadruplexに相互作用しているのかを調べた。円偏光二色性スペクトルの経時変化を調べた段階では弱い相互作用が予想されたが,長鎖の構造に大きな変化をおこし,これが生体機能に影響を及ぼしている可能性を見出した。
ワークステーションを用いた計算によるシミュレーションでは,G-quadruplexの変性過程や,TMPyPなどの小分子との相互作用サイト,相互作用による変性などを明らかにした。これらの変形がどのように長鎖DNAの構造変化に寄与しているのかは,まだ,正確には分からないが,特に,カリウム濃度が低い時や,他のイオン存在下でも二重鎖構造からG-quadruplexに構造変化することも示唆する結果を得ているので,この構造変化の過程を詳細に調べるために行うシミュレーションの際に用いる条件検討も行った。
さらに,長鎖DNAをシミュレーションするプログラムの作成を行った。まず,これまでの実験で行っている線状DNAをモデルにシミュレーションするプログラムの作成を行った。このモデル計算では,ビーズスプリングモデルにおいて屈曲角に独自のポテンシャルを入れることにより,疑似的な持続長を定義した。実験ではイオン強度を変える事により持続長を変化させることができることから,これらの結果を比較する事により,実験では観察することのできない直鎖状DNAのマイクロ秒以下の挙動を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

令和元年度に行った,Idarubicineやirinotecanなどのテロメアーゼ阻害剤やトポイソメラーゼ阻害剤がどのようにG-quadruplexに相互作用しているのかの実験結果を計算機シミュレーションにより詳細に調べる。特に,結合の前後におけるG-quadruplexの構造や結合した分子の構造の変化の有無やこの変化に伴うG-quadruplex構造の安定化への影響を調べる。また,ひとつの分枝が結合する事により共同的に多分子が結合するアロステリック効果の有無についてもCDストップトフローの実験結果と矛盾が無いかを調べる。
長鎖DNAをシミュレーションするプログラムでは,環状DNAをモデルにしたシミュレーションプログラムを作成する。このモデル計算では,直鎖モデルで用いたビーズスプリングモデルの屈曲角のポテンシャルパラメーターを入れることにより,実験結果を再現できるのかを明らかにする。さらに,このモデルに捩れ応力のパラメーターを加える事により,G-quadruplex構造を取る時と取らない時の相関関数の違いなどの実験結果を再現し,実験では見ることのできない分子の詳細な動きやマイクロ秒以下の短時間における構造変化などを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

昨年度が最終年度であったが,9月に体調不良のため2週間ほど入院した。退院後も,すぐには体調が完全にはならず,研究の進みに遅れを生じた。研究に必要な物品等はほぼ全て購入済みであったが,この研究の遅れにより、研究が完了できず予定していた研究発表などを行うことができなかった。残予算は,概ねこの成果発表やそれに伴う,文具等の費用である。このため,令和2年度においては,この予算を用いて,上記の成果発表等を行う予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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