研究課題/領域番号 |
17K05016
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤原 英樹 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (10374670)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光局在場 / ランダム構造 / レーザー誘起水熱合成 / 酸化亜鉛 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度中に見出した新規な表面二次元構造作製技術である、レーザー誘起表面凹凸作製法による構造の最適化やランダムレーザー発振の確認を中心に行った。この手法では、高強度パルス照射 により基板界面にラフネスを形成し、そのラフネスから自発的にランダムレーザーが誘起されるため、安価・簡便に作製できるだけでなく、様々な基板上の 任意の位置にランダムレーザーを意図的に作製する事が可能となる。実験では、ZnOと同様に紫外域での発光やレーザー発振の観測例のあるGaN平面基板を用い、照射するレーザーの強度や時間を調整することにより、ランダムレーザー発振に最適な構造を作製するための条件探索を行った。その結果、照射レーザー偏光の向きに応じたリップル構造が作製できることをSEM像観察により確認し、600 MW/cm2程度の強度のレーザーを10秒程度照射したのち、レーザー発振閾値が最小となることを確認した。 また、ランダムレーザー・局在場の制御を行う手法として、磁性基板上に作製したZnOナノ粒子フィルムにおいて、レーザー発振のスイッチングを試みた。外部から磁場を印加することにより磁性基板での反射光のカー回転が起き、局在モードへのフィードバックが変化することによってレーザー発振が変化する様子を確認した。今後はこの成果を基に、磁性基板上への半導体ナノロッドの作製を試み、磁場によるレーザー発振・局在場制御を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的とは異なるものの、新規な構造作製法の提案や、新規な局在場制御技術の提案・実証を進め、低しきい値ランダムレーザー発振の観測やランダムレーザー発振のスイッチング手法の開発に成功した。これらの作製手法や制御手法に関する招待講演2件、学会発表11件を行い、査読付き論文2報を発表した。 研究は順調に推移しており、今後はこの成果を基に、磁性基板上への半導体ナノロッドの作製を試み、磁場によるレーザー発振・局在場制御を試みる予定であり、最終的にはシングルモードのレーザー発振のデモンストレーションを行う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した表面凹凸作製法や磁場印加による局在モード制御技術をナノロッドアレイ構造に適用し、ナノロッドアレイランダムレーザーの発振制御を試みる。 当初計画の通り、上記と並行してレーザー誘起水熱合成条件の更なる条件探索を継続して行う。具体的には、ロッド径のばらつきの原因であると考えられる温度ムラを抑制するための照射レーザー光のプロファイル制御や、結晶成長制御を行うためのエチレングリコール混入等を行い、より制御性の優れた構造作製評価を行う。 また、本年度の成果と当初の計画を組み合わせ、磁性基板上への半導体ナノロッドの作製を試み、ナノロッドアレイ構造におけるランダムレーザー発振の低しきい値化やシングルモード化、スイッチング動作などの局在モード制御の検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は計画途中で見出したレーザー誘起表面凹凸形成法によるレーザー素子作製を中心に研究を行った。当初計画していたナノロッド作製・発振確認を行うための試薬や光学部品を購入せず、既存の部品や試料で実験を行った。また、新たな制御手法の探索のための磁性基板や磁石を購入したため、計画時との購入金額に差額が生じた。
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