研究課題
本研究では,高温超伝導体Bi2212単結晶を用いたテラヘルツ波発振器(Bi2212-THz波発振器)の出力の向上に向けた研究を行った。本年度は,複数素子による出力向上の実現を目指し,次の2つの点を重点的に行った。 1つ目は,複数素子の安定的動作を目指した素子構造の改良を行った。Bi2212-THz波発振器を製作するには,Bi2212単結晶のチップ構造(単独メサ構造)を,2つの電極間に機械的に固定する必要がある。この単独メサ構造の固定の安定性が,素子の発振特性に影響する。本年度はこれを,複数の単独メサ構造をアレイ状に適用できるよう改良した。具体的には,電極基板,電極用蒸着膜,電極基板間の緩衝材の導入,電極基板を支持する金具の改良等を行った。2つ目は,単独メサ構造の製作方法の改良を行った。これまでは,ドライエッチングを用いて結晶を単独メサ構造に加工してきた。しかし,最近はウエットエッチングでの加工方法を開発したので,この手法をさらに改良して,単独メサ構造が簡便に大量に作製できる技術を開発した。これらの改良により,現在では,2アレイ素子に関しては,安定的に作製と評価ができるようになった。そして,2アレイ素子において協調的動作を示唆する振る舞いも得られており,現在その再現性を確認中である。これらの研究成果は,学術論文や学会(日本物理学会, 応用物理学会, IRMMW2019)等で適宜報告を行った。本研究期間では,当初目標の発振出力には至らなかったが,素子の作製技術が格段に向上し,これまで以上に,発振特性や電気特性の再現性の高い素子が得られるようになった。特に数年前は全く作製が困難であった,単独メサ構造のアレイ構造も簡便に作製できるようになってきた。これらの技術改善は素子性能の評価・向上において極めて重要であり,今後につながる十分な成果が得られたと考えている。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (3件)
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