研究課題
前年度の研究により、ステンレス板にドットレジストパターンを形成し、それをマスキング材としてエッチングすると、凸レンズ状の突起が形成されることが分かった。この突起の大きさや高さは、オキザリスデッペイという植物の撥水枯葉表面に類似していた。そこで、ステンレス板の撥水性向上が図れるのではないかと考え、研究を発展させた。直径20μm、ピッチ35μmのパターンを六方最密配置で形成し、エッチング深さを最適化すると、局部的に100度以上の接触角が得られることが分かった。一方、前年度までは、レンズ面を作るため、投影露光時のデフォーカス量を変えてレジスト断面側壁の形状を制御していた。これに対し、新たな方法として、液晶ディスプレイをレチクルの代替として露光量に分布を持たせたグレースケール露光を行い、レンズ状の面を作ることを試みた。しかし、ディスプレイ用の液晶は波長420nm以下の短波長がカットされていて紫外線用の化学増幅型レジストが使えないため、1ショットの露光に数10分も要することが分かった。そこで、紫外線用の厚膜化学増幅型レジスト上にg線(波長436nm)薄膜レジストを重ねて塗布し、上層のg線薄膜レジストを液晶ディスプレイにより露光し、形成したg線薄膜レジストパターンをマスキング材として下層厚膜化学増幅型レジストを露光することにより厚膜パターンを形成する2層レジストプロセスを開発した。3年間の研究で、短ピッチレンチキュラーレンズ、密接プラスチックレンズアレイの新しい製作方法を開発し、レンズ機能を確認した。また、用いた厚膜レジストプロセスは、金属の粗い面上へのパターン形成にも有効であることが分かり、レンズ状撥水面形成の研究で蓄積したステンレス板加工技術は、ステンレス管の複雑加工にも応用できた。マイクロレンズ製作技術の開発に加えて、様々な新しい展開の芽を得ることができた。
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