研究課題/領域番号 |
17K05022
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
早瀬 仁則 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (70293058)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 異形電解質膜 / 電気化学的原子層堆積 / UPD / フィリング電解質膜 / 多層触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、主として「電極板に密着する異形電解質膜」および「多層構造による高CO 耐性触媒層」の作製を課題としている。
異形電解質膜について:昨年度に引き続き、ポリエチレン多孔質膜に酸素プラズマエッチングを施して異形加工をしたのち、電解質モノマーを充填・重合することで、異形膜作製を行い、小型燃料電池の性能向上を図った。今年度は、反応面積を、現有装置群では最大と考えている 4 x 4 mm にまで拡大した。異形電解質膜の効果により、概して従来方法よりは高い出力を得たものの、期待した出力には及ばなかった。原因として、出力向上に伴う生成水が増大し、フラッディングが生じていることが考えられた。そこで、生成水排出を促す流路構造を、新たに厚膜レジストにより試作し、適用した結果、出力向上が観察された。しかしながら、この流路構造は暫定的なものであり、さらなる最適化が必要である。
多層構造触媒層について:昨年、Auをコア材とし、Pd、PtをAu上に電気化学的原子層堆積により精密に堆積させることを考案、試作に成功した。今年度も、この電気化学的原子層堆積による多層触媒形成を試み、最適化を進めた。また、高分解能の電子顕微鏡により、構造解析の試みを開始した。現在までに、Pd十層程度を堆積した多孔質AuをScanning Transmission Microscopeにより観察した結果、Auの周りにPdが分布していることが観察された。しかしながら、Pd層の直接観察は難しく、どの程度一様に堆積出来ているかは不明であり、引き続き解析を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異形電解質膜により、反応面積を拡大しての性能向上が見られた。また、多層構造による触媒の構造解析を開始でき、実際にセルの試作、発電試験も行えるようになっており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
燃料電池性能向上に伴い、従来よりも多くの生成水が発生し、水管理が重要なステージとなってきた。試作した排水促進構造は、初歩的なものであり、改良を進める必要がある。
また、多孔質Auへの原子層堆積は、新しい試みであり、未知な点が多い。構造をしっかり確認しながら進めたいと考えている。実際のAu-Pd-Pt触媒の適用では、物質輸送、機械的強度の観点から、多孔質孔径を大きくしたいと考えており、多孔質Auの形成を見直す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬などの消耗品での使用を予定していた。1価の金塩など、輸入品で納期が長いものもあったため、年度内に使用せず、次年度に購入したいと考えた。
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