研究課題/領域番号 |
17K05025
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 信一郎 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10262601)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非平衡グリーン関数 / DFT / 分子ジャンクション / オリゴチオフェン / トポロジー / 環状ポリマー |
研究実績の概要 |
近年、ポリマーのトポロジー構造が、その物性に及ぼす影響について興味がもたれ、環状や星型など様々なトポロジー構造を持つポリマーが合成されている。本研究ではオリゴチオフェンのトポロジー構造が導電性に及ぼす影響について注目した。導電性ポリアセチレンの発見以来、様々な導電性ポリマー材料が開発されてきたが、熱安定性がよいポリチオフェン類は重要な導電性ポリマーとして幅広く使われている。前年度に導入した量子伝導特性計算プログラムASCOT (Ab initio Simulation COde for quantum Transport)を用いて、密度汎関数法(DFT)および非平衡グリーン関数法(NEGF)を用いたナノ金電極に挿まれたオリゴチオフェン分子からなるmolecular junction構造の導電特性の解析をおこなった。直鎖と環状のトポロジー構造のオリゴチオフェン分子の導電性についてシミュレーションした。トポロジー構造以外の導電性に影響を与える要素として、電極に接続する末端チオフェンの置換部位(α、β)や、シストランス異性体構造、重合度の影響についても調べた。直鎖トランソイドの場合、オリゴチオフェンの重合度が上昇すると、バンドギャップは小さくなるものの伝導性は低下した、重合度が同じ6merの場合、直鎖、環状トランソイド、環状シソイドの全エネルギーは同程度だが、バンドギャップは環状が直鎖より大きい(直鎖二量体と三量体の間程度)と言う結果を得た。導電性は直鎖α置換体>環状>直鎖β置換体となった。これは電極に接続するチオフェン部位がβ置換位置にある場合、そこに軌道電子密度が無い事が影響していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に導入した量子伝導特性計算プログラムASCOT (Ab initio Simulation COde for quantum Transport)を用いて、密度汎関数法(DFT)および非平衡グリーン関数法(NEGF)を用いたナノ金電極に挿まれたオリゴチオフェン分子からなるmolecular junction構造の導電特性の解析へと研究を拡張できた。
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今後の研究の推進方策 |
複数のオリゴチオフェン分子を金ナノ電極間に並列に配置し、オリゴチオフェン分子の間隔が導電性に及ぼす影響について調べる。また同じチオフェン数からなる環状オリゴチオフェンと比較検討しトポロジー効果について考察をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により出張回数が減ったため。出張回数の減少により生じた余剰予算は本年度は、研究効率向上を目指して、計算用ワークステーションの補強(台数の増加やGPUボードの使い)に充てる。
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