研究実績の概要 |
レアアースを使用しない蛍光発光物質であるAg型ゼオライトについて、本研究は以下の2点に目的をおいて研究を遂行した。 A:これまでは励起光に405 nmを主に用いてきたが、より短波長の励起光を網羅的に用いることにより、これまで見落としてきた可能性のある発光種を探索した。本申請で購入した蛍光分光器を用い、励起光として220 - 600 nmを連続的に照射したところ、これまで405 nm励起で観測されていた蛍光は、A型ではサブバンドでありX, Y型ではメインバンドの裾野であることが判明した。メインバンドはA, X, Yそれぞれで530, 510, 460 nmであり、励起波長は270 - 350, 260 - 350, 250 - 330 nmであった。この励起波長帯は人体に最も悪影響を与える紅斑紫外線領域とほぼ一致していることが明らかとなった。加熱処理温度依存性も調査し、最大強度の蛍光が得られるのは加熱時間が3時間の場合A, X, Yそれぞれ400℃, 500℃, 700℃であった。 B: 発光源がゼオライト骨格である場合に、Agクラスターの役割は何か? クラスターの存在によって骨格の構造がどのように影響を受けるか調べる。そのためにゼオライト骨格原子であるAlおよびSiのK端XAFSを測定し、ゼオライト骨格の構造変化を調査した。データは現在解析を勧めている段階であるが、Agの存在および加熱処理により骨格に歪みが生じていることは明らかとなった。また、冷却開始直後からの蛍光発光を1分毎に計測したところ、Agクラスターの崩壊過程およびそれに伴うAgイオンの位置変化が原因と思われる蛍光発光エネルギーおよび強度の変化が観測できた。同様の測定をXAFSで行うことにより、この仮説を実証する予定である。
|