研究課題/領域番号 |
17K05028
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊池 伸明 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80436170)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | XMCD / スピンダイナミクス |
研究実績の概要 |
強磁性体と白金(Pt)を積層した界面においては,界面に大きな磁気モーメントが発生すること,また,界面に垂直な方向に大きな磁気異方性が発生することが知られており広く研究が進められてきた.近年になって,Pt層において大きなスピンホール効果が生じ,スピン分極した電流を磁性層に注入することで磁化方向の制御が可能であることが注目を集めている. これまでに報告されている研究では,電気的あるいは光学的な手法により磁化の挙動が検出されているが,これらの手法では,強磁性体層の挙動と分極したPtの磁気モーメントの挙動を独立に計測することが不可能である.そこで,本課題では元素選択制をもつ放射光を用いたX線磁気円二色性(X-ray magneticcircular dichroism:XMCD)を採用することで,スピン分極した電流により励起された分極したPt層の挙動を強磁性層と独立に計測し,その磁化ダイナミクスを明らかにすることを目指した. 本年度は,高感度なXMCD計測のための試料作製と,XMCDによるダイナミクス計測のための計測系の構築について研究を遂行した.具体的には,Co/Pt界面を含む薄膜試料を作製し,XMCD信号強度や磁気異方性定数などの最適化を行った.また,CoPt合金からなるグラニュラー試料を用い,GHz帯の高周波磁場下でのマイクロ波アシスト磁化反転の様子について調べた.また,XMCD計測においては,高周波導入のためのプローバー作製と,ナノ集光ビームを用いたGHz帯の時間・空間分解計測系を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では,放射光XMCDを用いて強磁性体/Pt界面における磁化ダイナミクスを明らかにすることを目的とする.最終的なターゲットはスピン分極した電流により励起された磁化ダイナミクスおよびその制御に関する知見を得ることであるが,今年度は,被測定試料にCo-Pt合金からなるグラニュラー試料も含め,Co-Pt系のGHz帯における磁化ダイナミクスの評価を行った.XMCD測定装置中で用いるプローバーの作製や,試料構成の最適化および時分割XMCD計測手法の立ち上げについては当初の計画通りに進行させることができた.ただし,実験室レベルでの電気的・磁気光学効果による評価については,やや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,おおむね研究計画は順調に進展しており,2019年度も当初の研究計画に沿って進める.界面で分極したPt層は1nm程度と非常に薄いため,XMCDにより得られる信号が小さい.また,磁化励起のための電流による発熱の影響も大きいことから,試料構成の変更による信号雑音比の向上や測定プログラムの改良なども行っていく必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初物品費として計上していた微細加工用のマスク類およびXMCD計測用の冶具を,学内の施設で作製できたため,費用を低減できたことにより未使用額が発生した.また,これらの費目はその他の項に含まれているため,物品費が大きく低下することとなった.最終年度には高周波計測用の増幅器の導入を予定しており,これらの費用に充てる予定である.
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