高度好塩菌から得られる光受容タンパク質バクテリオロドプシン(bR)は動物の視物質に類似した機能を有し、bRに光を照射すると時間微分応答の光電流が得られる。本研究課題ではbRタンパク質をインクジェットプリンタにより基板上に直接パターン形成し、かつ膜厚コントロールを行う技術を開発することを目的とする。さらに、このパターン形成技術を用いて視覚野にある単純型細胞の機能を模倣するガボールフィルタ空間特性を取り入れた光センサーを構築し、高機能視覚情報デバイスの研究開発を行う。従来のデジタルシステムでは画像と空間フィルタのたたみ込み演算に膨大な処理と時間を要していたが、bRセンサー自身で演算が可能となり、リアルタイム性を必要とするロボットの運動制御、IoTにおける高機能センサーとしての応用が期待できる。本年度は、インクジェットプリンタを用いたbR薄膜パターン形成のための各パラメータのさらなる最適化を行い、理想的なガボールフィルタ空間特性を得るための光センサー(cos型、sin型)の改良を行った。プロジェクタを用いて縦長の光バーを改良した光センサーに照射走査した結果、ガボールフィルタの最適空間周波数に対応する光バーの幅でピーク電流値が最大となり、期待する光応答が得られた。さらに、パターンの設計値に基くシミュレーションと比較し、実験結果とほぼ一致することが示された。得られた研究成果については、国内学会、国際会議(米国)で発表報告した。2019年度材料技術研究協会討論会においては、ゴールドポスター賞を受賞した。
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